生殖補助医療(体外受精など)とは?
体外受精は、女性の卵巣から排卵しそうになった成熟卵子を取りだし(採卵)、体外で受精するように1つの卵子に数万の運動精子を一緒にし(媒精)、培養器内で3~6日間にわたり経過を観察し(培養)、受精し発育した受精卵(胚)を子宮腔内へ移植し、妊娠を期待する治療法です。
この媒精に用いる精子が不足する場合には、1つの精子を卵子の細胞質内に注入する顕微授精を行います。体外受精と顕微授精は媒精の方法が異なるだけで、あとは全て同じです。
採卵した周期に移植(新鮮移植)、または採卵周期に移植しなかった胚を凍結保存して別周期に融解移植するようにします。
なお、初回の治療計画開始にあたっては、ご夫婦一緒に受診していただいての説明同意が必要とされています。「忙しくて受診できない」は認められないとされています。
また婚姻関係が記載されている住民票(発行から半年以内)をお持ちください。
どこの医療機関でも成績は同じですか?
医療機関によって治療方法や治療成績は異なります。体外受精の治療成績の全国集計は、日本産科婦人科学会ホームページ刊行物の日本産科婦人科学会雑誌などでご確認いただけます。
各医療機関の成績は、個別にホームページ等で公開されていると思われますが、短期間の成績だけでなく年間を通じての最新成績が公開されているかどうか、妊娠率は妊娠診断薬陽性確認ではなく胎嚢確認率で表現されているか、生産率(生児獲得率)が公開されているかなどを確認してください。
もっとも重要な数値は、治療に対しての生産率です。当院の体外受精成績は、当院ホームページの妊娠例報告の体外受精など生殖補助医療の成績でご確認ください。
費用負担の軽減
「体外受精」や「人工授精」の保険適用化により、窓口支払いが軽減できる「高額療養費制度」が利用できる可能性があります。この利用に際しては、高額医療限度額認定証のご提示が必要になります。各健康保険組合によっては発行までに時間がかかる可能性がありますので、早めにご自身の健康保険組合にご確認、ご申請をお願いします。
高額医療限度額認定証(高額療養制度)とは?
厚生労働省保険局「高額療養費制度を利用される皆さまへ」(PDF)
高額な保険診療を支払う際に事前にご自身の加入している保険組合に申請しておくことで、お支払い額が自己負担限度額までになり、残りの差額は健康保険組合から医療機関に直接支払われる制度です。高額医療限度額認定証の提示がない場合は3割負担でお支払い頂き、後日ご自身で高額療養費申請を保険組合にすることで差額が返金されます。保険診療外のものは対象外になりますのでご注意ください。
また、先進医療(自費の保険外併用療養)も含め医療費控除の対象となりますので、領収書は大切に保管するようにしてください。
先進医療とは?
必要あれば、自費診療ですが、保険診療と併用できます。
先進医療について詳しくはこちら 先進医療の費用一覧はこちら 繰り返しの胚移植で着床されていない方へ (着床不全) 着床前胚染色体異数性検査について (PGT-A)
生殖補助医療(体外受精など)で妊娠を目指す25か条(2022年4月版)
体外受精は、妊娠しにくい原因が不明なままでも、あるいは見つかった原因が取り除けなくても、もっとも妊娠が期待できる治療法です。しかしながら女性加齢によって妊娠出産の期待率が低くなりますので、治療するかどうか?いつ始めるか?いつまでチャレンジするか?といったことも夫婦で良く話し合っておく必要がありますね。
- 治療法や成績を知っておく(女性加齢に伴って治療成績は低下する)
- 卵巣予備機能検査(抗ミュラー管ホルモンAMH値)を確認する
- 並行して精液所見や体重指数BMI値の改善も目指す
- 初めて治療計画を立てる際は、夫婦一緒に受診する
- 採卵予定周期の卵巣刺激(注射や内服薬)は、月経3日目開始を基本とする
- 調節卵巣刺激法では、排卵抑制のための薬剤(点鼻薬・内服薬・注射)を併用する
- 低刺激法(mild刺激)では、排卵抑制はできず採卵キャンセル率は高くなる
(クロミフェン<アロマターゼ阻害剤) - 発育卵胞数が少ないほど「採卵できない確率」は高まる
- 発育卵胞数が多すぎると卵巣過剰刺激症候群リスクが高まる
- 採卵日は2日前に決まる(卵胞発育に合わせて決める)
- 採卵日には精子が必要(採取当日に採取、射精間隔はあき過ぎないほうがよい)
- 顕微授精では射精間隔は短い方がよい
- 体外受精と顕微授精との違いは、精子と卵子を一緒にさせる方法の違いだけで、前後は同じである
(体外受精では1つの卵子に数万の精子、顕微授精では1つの卵子細胞質に1つの精子を注入) - 良好運動精子が足りれば体外受精だが、受精0%に備えて半分を顕微授精にするスプリット法も考慮される
- 採卵できていても未熟卵子であったなら、受精せず顕微授精もできない
- 受精するとはかぎらず、また受精しても胚盤胞まで発育するとはかぎらない
- 複数の胚盤胞を凍結保存し、別周期に融解移植することを一番の目標とする
- 初回採卵、採卵3日目に形態良好分割胚、移植可能な子宮環境、これら条件が総てが揃えば新鮮移植も考慮できる
- 子宮内膜薄い、女性ホルモン高値、採卵数が多い場合などでは、移植せずに胚盤胞を全凍結する
- 女性35歳未満で2回目までは単一胚移植しかできない(日本産科婦人科学会倫理規定)
- 女性40歳以上や良好形態胚盤胞ないとき二胚移植も容認される
(日本産科婦人科学会倫理規定、筋腫などできないこともある) - 良好形態胚盤胞は単一移植がお勧め(多胎妊娠を避ける、トータルの成績向上)
- 保険適用では女性年齢と胚移植回数に制限がある
(1子あたり、40歳未満6回まで、40-42歳3回まで) - 先進医療は、保険治療の結果をみてから考える
- 身体的・精神的・経済的な負担も大きいので、カウンセリングも利用し、夫婦で相談・納得して方針を決める
体外受精による出生児
現在までの外国および日本の統計調査によれば、体外受精などの治療によって妊娠した児の先天異常発生頻度は、通常の妊娠と変わりません。また集中的に発生した奇形などの異常も確認されていません。一般的に母体の加齢が進むほど、流産する確率は高くなり、またダウン症候群で代表されるような児の先天的染色体異常の発症頻度が高くなります。また、多胎妊娠では、早産や未熟児の原因となり、このことが新生児異常に結びつく可能性を高くしますので、現在、日本産科婦人科学会は胚移植数を35歳未満かつ2回までは1胚に、その他の場合も2胚までにするように勧告しており、当院はこの勧告に従い基本的には単一胚移植をお勧めしています。体外受精では子宮内に胚移植しますが、異所性妊娠(子宮外妊娠)の可能性は残ります。精子所見が極めて不良な場合の顕微授精では、生まれた男児の精子所見が遺伝する可能性があります。また将来的に問題点が発見される可能性が全くないとは言い切れません。
体外受精を希望する場合どうしたら良いですか?
体外受精を希望される場合、下記のページより詳細をご確認いただけます。
生殖補助医療(体外受精/顕微授精など)を希望して来院される皆さまへ 生殖補助医療(体外受精)の費用について 生殖補助医療(体外受精)の成績について 繰り返しの胚移植で着床されていない方へ (着床不全) 着床前胚染色体異数性検査について (PGT-A) 精巣内精子採取術について (TESE)