生殖補助医療の治療成績(体外受精/顕微授精/新鮮胚移植/融解胚移植)
当院において2018年から2020年に実施した体外受精などの生殖補助医療の集計データです。

胚移植あたりの妊娠率:移植周期あたりの胎嚢が確認できた割合です
新鮮胚移植:採卵した周期に胚移植することです。当院では採卵3日目に良好形態の分割胚があり、かつ移植できる条件が揃っている場合に、希望があれば移植可能としています。
融解胚移植:採卵5~6日目に移植可能に発育した胚盤胞を凍結保存し、別周期に融解して胚移植することです。
- 新鮮胚移植と比較し、融解移植が高い妊娠率を示しています。
- 当院の場合、「新鮮胚移植は採卵3日目の良好形態分割胚を基本として行っています」ので、「良好形態分割胚と判定していても胚盤胞に発育しないことがある」ことも理由の1つとして挙げられます。
- 女性加齢と伴に妊娠率は低下していました。
- これら成績は必ずしも個々の方にあてはまるものではありません。相談の参考にしてください。
当院において2018年から2020年に実施した生殖補助医療の集計データです。
1回の採卵で、少なくとも1回の妊娠や出産があった割合です。

累積妊娠率:新鮮胚移植や融解胚移植の回数に関わらず、1回の採卵で妊娠された割合です。採卵しても胚移植にまで至らないこともありますので、このような指標を示しています。
累積生産率:新鮮胚移植や融解胚移植の回数に関わらず、1回の採卵で生児出産された割合です。妊娠されても出産にまで至らないこともありますので、このような指標を示しています。
- 女性加齢と伴に累積妊娠率・累積生産率ともに低下していました。
- これら成績は必ずしも個々の方にあてはまるものではありません。相談の参考にしてください。
当院において2018年から2020年に実施した生殖補助医療の集計データです。
分割胚移植(採卵3日目の新鮮胚移植)と胚盤胞移植(融解胚移植+少数の新鮮胚移植)の妊娠率の比較を女性年齢40歳未満と40歳以上に分けて示しています。

分割胚移植:当院では、初回採卵で、採卵から3日目に良好形態分割胚があり、移植できる状態が全て揃っている場合の新鮮胚移植しか、分割胚移植をおすすめしていません。
胚盤胞移植:採卵5〜6日目に移植可能な胚盤胞に発育した移植です。ほとんどが採卵周期に凍結し、別周期に融解しての胚盤胞移植です。
- 分割胚移植に比較し、胚盤胞移植の妊娠率が高くなっています。「採卵3日目に良好形態分割胚と判定しても、胚盤胞に発育しないことがある」ことも理由の1つとして挙げられます。
- 胚盤胞移植のほうが「より発育を確認しての移植」と言えます。
- これら成績は必ずしも個々の方にあてはまるものではありません。相談の参考にしてください。
当院において2018年から2020年に実施した生殖補助医療の集計データです。
AMH値と平均採卵数の関係を女性年齢で40歳未満と40歳以上に分けて示しています。

AMH値:卵巣予備機能の指標とされる抗ミュラー管ホルモンの検査値です。
採卵数:当院プロトコールで低刺激法や調節卵巣刺激を行い採卵できた卵子数です。
このデータは必ずしも個々方にあてはまるものではありません。
- 採卵数の予測は、女性年齢・AMH 値のほか、月経3日目の胞状卵胞数や過去の卵巣刺激に対する反応性などを指標にします。
- 採卵数は「卵巣刺激に反応して発育してくる成熟卵胞数」によるところが大きいです。
- 採卵数の目安を8〜12個として卵巣刺激方法を相談して決めます。
生殖補助医療の治療成績(初回採卵に絞った成績)
当院において2018年から2020年に実施した体外受精などの生殖補助医療の初回採卵に絞っての胚移植あたりの妊娠率(胎嚢が確認できた割合)です。
新鮮胚移植:採卵した周期に胚移植することです。当院では採卵3日目に良好形態の分割胚があり、かつ移植できる条件が揃っている場合に、希望があれば移植可能としています。
融解胚移植:採卵5~6日目に移植可能に発育した胚盤胞を凍結保存し、別周期に融解しての胚移植です。

- 新鮮胚移植と比較し、融解移植が高い妊娠率を示しています。
- 当院の場合、「新鮮胚移植は採卵3日目の良好形態分割胚を基本として行っています」ので「良好形態分割胚と判定していても胚盤胞に発育しないことがある」ことも理由の1つとして挙げられます。
- 女性加齢と伴に妊娠率は低下していました。
- これら成績は必ずしも個々の方にあてはまるものではありませんが、相談の参考にしてください。
当院において2018年から2020年に実施した体外受精などの生殖補助医療の初回採卵に絞っての1回の採卵で、少なくとも1回の妊娠や出産があった割合です。
累積妊娠率:新鮮胚移植や融解胚移植の回数に関わらず、1回の採卵で妊娠された割合です。
累積生産率:新鮮胚移植や融解胚移植の回数に関わらず、1回の採卵で生児出産された割合です。妊娠されても出産にまで至らないこともありますので、このような指標を示しています。
- 女性加齢と伴に累積妊娠率・累積生産率ともに低下していました。
- これら成績は必ずしも個々の方にあてはまるものではありません。相談の参考にしてください。
日本産科婦人科学会から2019年の体外受精全国集計が2021年に報告されています
(ACTA Obstetrics ET Gynecologica Japonica, Vol 73 No 9. 1089-1110, 2021)
日本産科婦人科学会に体外受精治療の届出をおこなっている施設
「治療数からみた施設分布」 赤印は当院が該当する施設分布です
IVF-ET:採卵して通常媒精を実施
Splitt:通常媒精と顕微授精の両方を実施
ICSI(射出精子):採卵して射出精子を用いて顕微授精を実施
ICSI(TESE精子):採卵して精巣内精子採取で得られた精子を用いて顕微授精を実施
GIFT:腹腔鏡を用いて精子と卵子を卵管内に注入
凍結融解胚(受精卵):凍結した受精卵を融解して胚移植を実施
凍結融解(未受精卵):凍結融解した未受精卵を用いて治療実施
総治療周期数:458,101周期
移植周期数:253,593周期
妊娠(胎のう確認)周期数: 83,702周期
生産(生まれた)周期数: 58,986周期
- 総治療周期(治療を行った周期)は、40歳をピークとして39歳~42歳が多くなっています
- 移植周期数は、39~40歳をピークとして38~41歳が多くなっています
- 妊娠周期は、35~39歳ではあまり変わりない周期数になっています
- 生産周期数は、妊娠周期と比較し37歳から低下傾向がみられます
- 女性34歳までは治療周期数の増加に伴って、妊娠周期数や生産周期数が増加しています
- 女性35~39歳では、治療周期数に対しての妊娠周期数や生産周期数は、加齢と伴に少なくなっています
- 女性40〜44歳では、治療周期数に対しての妊娠周期数や生産周期数は、さらに減少していってます
- 45歳以上では、妊娠周期はあっても生産周期は極めて少ないことがうかがえます
FET出生児:受精卵を凍結(通常媒精/顕微授精には関わらず)して融解胚移植を行って出生した児数
ICSI出生児:採卵して顕微授精を行って、その周期に新鮮移植して出生した児数
IVF出生児:採卵して通常媒精を行って、その周期に新鮮移植して出生した児数
- 体外受精による出生児は増加しており、2019年には60,598人が生まれており、同年の出生児 865,239人に対し7.0%(14~15人に1人)が体外受精で生まれています
- 通常媒精や顕微周期数を行っての採卵周期の新鮮移植での出生児は、2003年までは少しずつ増加していましたが、2004年~2005年には伸びが止まり、2006年以降は減少傾向にあります
- 受精卵凍結しての融解移植での出生児は、1997年から次第に増加して、2005年以降はもっとも多くなり、2019年では出生児の4%を占めていました
新鮮胚(採卵した周期の卵)の治療成績です。当院の周期数や%を赤字で示しています
当院での「新鮮胚移植」は、初回の採卵で「卵巣過剰刺激症候群の心配しなくて良い」「ホルモン過剰状態でない」「子宮内膜が8mm 以上ある」など、子宮移植できる環境で、採卵から3日目に形態良好な分割胚があるときに、新鮮胚移植の選択肢の提示を行なっています。
諸条件が揃う方は少なく、また第一選択肢としては胚盤胞までの発育を待っての凍結融解胚移植をおすすめしています。ですので当院の新鮮胚移植の実施周期は多くありません。ですが分割胚では形態良好であっても胚盤胞にまで発育しないこともあります。
融解胚移植(通常媒精・Split・顕微授精の媒精方法に関わらず、体外受精で得られた受精卵を凍結し、融解して移植)の全国集計治療成績です。当院成績を赤字で示しています。
個別の医療機関の成績が報告されているわけではありませんが、自院成績が全国集計と比較して「どうであるか?」は、より良い医療を提供しようという医療機関にとっても、また医療機関を利用されるカップルにとっても、とても重要な情報です。
ただし、女性年齢や治療回数や治療法で成績は大きく異なる可能性がありますので、女性年齢別や治療法別などの成績を確認する必要がありますね。
妊娠率/生産率は向かって左側の表示(最大値50%)で確認
- 妊娠率/総胚移植:胚移植を行った周期に対する妊娠率(超音波検査で胎のう確認できた割合)
- 妊娠率/総治療:治療あたりの妊娠率(超音波検査で胎のう確認できた割合)
- 生産率/総治療:治療あたりの生産率(生産された割合)
流産率は向かって右表示(最大値90%)で確認
- 流産率:妊娠(胎のう確認)に対しての流産の割合
成績総括
- 胚移植あたり妊娠率、治療あたり妊娠率、治療あたり生産率は、34歳くらいまではあまり大きな変動はありません(微減)が、その後は女性年齢の増加にともなって治療成績が不良となっています
- 流産率は、34歳くらいまではあまり大きな変動がありません(微増)が、その後は女性年齢の増加にともなって高くなり、44歳以降では50%を超える割合になっています
FET周期:受精卵凍結(通常媒精/顕微授精に関わらず)して融解胚移植を実施した周期数
ICSI周期:採卵して顕微授精を行い新鮮胚移植した周期数
IVF周期:採卵して通常媒精を行い新鮮胚移植した周期数
- 総治療周期数は、2015年までは毎年増加していましたが、2016年からほぼ横ばい状態(微増)です
- IVF周期数は、2013年までは少しずつ増加していましたが、2014年からほぼ横ばい状態(微減)です
- ICSI 周期数は、2014年までは毎年増加していましたが、2015年からは微増状態です
- FET周期数は、2015年までは毎年増加していましたが、2016年から横ばい状態(微増)です
- 総治療周期の増加が止まっているのは、人口減少(とくに挙児希望カップルの減少)の影響が大きいと思われます
- 治療周期の増加が止まっているのは、このほかにも経済的負担、時間的負担、仕事と治療の両立などの影響もあると思われます
- 2020年の成績からはCOVID-19の大きな影響があると予測されます
妊娠率/新鮮胚移植:採卵周期の新鮮移植あたりの妊娠率(胎のう確認の割合)
妊娠率/融解胚移植:凍結胚の融解移植あたりの妊娠率(胎のう確認の割合)
生産率/採卵:採卵あたりの生児出産率(2007年以降、採卵周期から全凍結周期を除外)
多胎率:生産された方のうち多胎であった割合
- 新鮮胚移植あたりの妊娠率は、2002~2005年の28%程度をピークとして減少し、2008年以降はおよそ21%程度で推移しています。
- 融解胚移植あたりの妊娠率は、2003年くらいまで年々高くなっていましたが、その後は若干の改善にとどまっていますが、2019年は36%になっています。
- 採卵あたりの生産率は、2018~2013年の15%程度をピークとして下降し、最近では6%程度になっています。体外受精にチャレンジされるカップルの女性年齢などの影響もあると思われます。
- 多胎率は、2005年頃まで15~20%くらいありましたが、2006~2008年から日本産科婦人科学会からの会告もあり急激に減少し、最近は3%程度になっています。多胎妊娠はリスクもあることから避けるべきであり、また移植周期の子宮環境もあることから、受精卵の単一移植が基本になっています。