先進医療の詳細
強拡大顕微鏡を用いた形態学的精子選別術(IMSI)(先進医療)
→強拡大の顕微鏡を用いて、成熟精子の選択を行う技術です。
- 精子のDNA損傷は、生殖補助医療での妊娠成績に負の相関を認め、精子のDNA損傷が高いと流産率が高くなることが示されています(Arab J Urol 2017; 16: 21)。
形態的に良好な精子選別とは、具体的には顕微鏡の倍率を上げて精子頭部に空胞の少ない精子を選ぶことです。 - 「高倍率で精子選別を行う顕微授精(IMSI)」は「通常の倍率で精子選別を行う顕微授精」に比べて、精子頭部の小さな空胞も識別可能であること、空胞のない精子を選別することでDNA損傷が少ない精子の選別に有効である可能性があり、受精後の受精卵の発育は良いこと、妊娠率と出産率の増加および流産率の低下が示されています(Basic Clin Androl 2013; 23: 10)。
- IMSIは、精子頭部に空胞のある奇形精子が多い例、既往採卵において分割期以降の胚発育が不良例などの受精卵発育改善、妊娠率向上や流産率低下が期待できます(Fertil Steril 2013; 100: 62)。
子宮内細菌叢検査(EMMA/ALICE検査)(先進医療)
→子宮内細菌叢が正常であるのか、異常であるのか、またその菌の種類の組成を判断する検査です。
- 受精卵が着床する子宮内は、「無菌状態にある」と考えられていましたが、子宮内にも細菌が存在していることが分かってきており、EMMA(マイクロバイオーム)検査の導入により、子宮内膜における常在菌の種類と割合から、ラクトバチルス属の菌の割合が90%以上を占める人と、90%に満たない人とで、体外受精での結果に有意な差があることが報告されています。(Moreno and Simon et al., 2016)
- 慢性子宮内膜炎(CE)は、不妊症女性の約30%が罹患していると報告され、反復着床不全(RIF)および 不育症(RPL)患者の有病率は60%に達すると報告されていますが、ALICE(感染性慢性子宮内膜炎)検査は、従来の細菌培養検査では特定することが難しかったCEの原因菌を検出することができ、原因菌を特定することにより適した抗菌薬を選択することができるようになります。
子宮内膜受容能検査(ERA検査)(先進医療)
→子宮内膜を採取し、次世代シークエンサーを用いて遺伝子の発現を解析し、内膜組織が着床に適した状態であるのかを評価する検査です。
- 生殖補助医療における反復不成功例のなかに、形態良好胚を移植しているにもかかわらず妊娠にいたらない着床不全症例が存在します。着床不全の原因のうち、子宮および卵管側の器質的要因として子宮粘膜下筋腫、子宮内膜ポリープ、子宮内膜症、子宮奇形、卵管水腫などが挙げられます。一方で、機能的要因として性ホルモン異常、子宮内細菌叢の乱れや慢性子宮内膜炎による子宮内膜の感染症などに加えて、「着床の窓」にズレがある場合があると推定されています。着床不全の25~30%の症例が 【非受容期】つまり、胚移植実施予定の日に子宮内膜が受精卵を受け入れる状態にない、ということが報告されています。
- ERA検査では、子宮内膜組織の遺伝子検査により、個々の症例の「着床の窓」が’いつ’なのかを個別に確認することができるとされ、その検査結果に基づいて移植時期を個別に決定することにより、着床不全症例の妊娠率を改善できると報告されています。
タイムラプス培養
→培養器に内蔵されたカメラによって、胚培養中の胚を一定間隔で自動撮影し、培養器から取り出すことなく、正確な胚の評価が可能となる技術。
- タイムラプス培養では、培養器内にカメラが内蔵されており、24時間一定間隔で観察し続けることができます。また、培養器から胚を取り出すことなく、培養環境を維持でき、胚にとってよりストレスの少ない状態に保つことができます。
- タイムラプスによる胚培養で、成長速度や異常な受精、分割が明らかになり、それらと形態的な胚グレードの評価を組み合わせることで、妊娠しやすい胚の選択が可能となります。
- 良好な培養環境を維持することで、胚盤胞到達率、良好胚盤胞率、ひいては良好な妊娠率、生産率の向上が期待できます。
膜構造を用いた生理学的精子選別術
→マイクロ流体技術を応用したデバイスを用いて精子選別を行います。
- 現在、生殖補助医療に用いる精子選別は、密度勾配法とスイムアップ法を組み合わせた方法が一般的に実施されています。
しかし、これらの方法では遠心分離する必要があり、また多くの工程と長い時間を必要としています。このことから、精子の細胞質が壊れ、活性酸素が発生し、活性酸素による暴露時間が長いことでDNA断片化を生じる可能性があります。
この改善策として「1回以上、顕微授精を実施しても移植可能胚が得られない」または「胚移植しても妊娠に至らない」場合を対象として、マイクロ流体技術を応用したデバイス(ZyMōtTMスパームセパレーター)を用いて精子選別を行います。
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