【津高本院】不妊治療のページです
「何回移植すれば出産できるか」あらかじめ見通す新しい考え方
体外受精を「1回の治療」ではなく「一連の治療」として捉える
体外受精の1回あたりの成功率は20〜25%程度と、決して高くありません。今回は、「1回の治療」ではなく、「必要な回数をあらかじめ見通す」という新しい考え方を提案する総説をご紹介します。
❓ なぜ「1回あたりの成功率」だけでは不十分なの?
1回あたりの成功率が低くても、何度か治療を続けることで、最終的な出産に至る確率(累積出産率)は
大きく上がることが分かっています。
ある研究では、5回まで移植を続けた場合、98%の方が最終的に出産に至ったと報告されています。
❓ でも実際は、途中でやめる方が多いのでは?
はい。経済的・身体的・心理的な負担から、治療を途中でやめてしまう方は約36%にのぼるという大規模な調査結果があります。多くは医学的な理由ではなく、負担の大きさが原因です。
❓ 「あらかじめ見通す」とは具体的に何をするの?
年齢・AMH・体重などの情報から、「出産に必要な移植の回数」、「そのために必要な採卵回数」をあらかじめ計算し、治療計画全体を患者さんと共有するという考え方です(Expected Live Birth Rate:ELBR)。
❓ この考え方のメリットは?
✅ 見通しが分かることで、治療を途中でやめてしまうリスクを減らせる可能性がある
✅ 必要な採卵回数を先にまとめて行うことで、治療期間の短縮につながる可能性がある
✅ 経済的な計画も立てやすくなる
❓ この考え方の注意点は?
施設ごとにデータや基準が異なるため、計算方法の標準化がまだ課題です。
また、見通しが厳しい場合には、治療を続けるかどうかを慎重に考えるサポートも必要とされています。
🌈 まとめ
- 体外受精は「1回の治療」ではなく「一連の治療」として捉えることで、最終的な出産率は大きく上がる可能性がある
- 治療を途中でやめる方の多くは、医学的理由ではなく経済的・身体的な負担が原因
- 年齢や検査値から「必要な移植回数」をあらかじめ見通す新しい考え方(ELBR)が提案されている
- 見通しを共有することで、治療の継続や計画がしやすくなる可能性がある
📋 院長からのコメント
「今回の治療で結果が出なかったら終わり」と思い込んでしまう患者さんは少なくありません。この総説が提案する「治療全体の見通しを最初に共有する」という考え方は、患者さんの不安を減らし、治療を続ける力になる可能性があると感じました。
まだ施設ごとの基準づくりが必要な段階ですが、当院でも今後、こうした見通しの共有の仕方を取り入れていきたいと考えています。
📚 出典
Gianaroli L, Mocanu E, Fatemi H, Sgargi S, Ata B, Fauser BCJM. Helping patients achieve their expected live birth rate: an ART paradigm shift. Reproductive BioMedicine Online. 2026;53(3):105785.
