【津高本院】不妊治療のページです
使用する黄体ホルモンの「種類」で妊娠率が変わる?
妊娠のカギは「黄体ホルモン」にあります
体外受精や胚移植の治療で、必ず出てくるのが黄体ホルモン(プロゲステロン)
です。この黄体ホルモンは
- 子宮内膜を着床しやすくする
- 妊娠を維持する
という、妊娠の土台を支えています。
黄体ホルモンの薬には、いくつかの「種類」があります
内服薬もありますが、膣に挿入するプロゲステロン製剤には代表的に2種類があります。
- カプセルタイプ(例:Utrogestan)
- 坐薬タイプ(例:Cyclogest)
どちらも日常診療で広く使われていますが…
「どちらが良いか」ははっきりしていませんでした

4万周期の大規模研究で分かったこと
42,291周期という超大規模データ、これはこの分野では最大級です。
結果①:出生率に明確な差
新鮮胚移植(体外受精IVF/顕微授精ICSI)
- カプセル:34.3%
- 坐薬:27.8%
👉 約6.5%の差
凍結胚移植(FET)
- カプセル:36.7%
- 坐薬:32.9%
👉 約3.8%の差
👉 つまり、どちらの治療でもカプセルの方が出生率が高い
結果②:流産率にも差が出た
凍結胚移植
- カプセル:17.2%
- 坐薬:19.7%
👉 約2.5%低い
さらに解析すると
👉 流産リスクが13%低下(aRR 0.87)
結果③:妊娠率も上がる
- IVF:38.5% vs 32.5%
- FET:40.9% vs 37.7%
👉 約7〜8%の上昇
なぜこんな差が出るの?
ここがとても重要です。実は血中ホルモン値だけでは説明できません。論文では
- 子宮への直接移行(first uterine pass effect)
- 組織レベルでの作用
- 吸収の違い
などが関係すると考察されています。
👉つまり「同じホルモン量」でも効き方が違う可能性
よくある疑問:血中プロゲステロンは見た方がいい?
最近よく話題になりますが、 「10 ng/mL以上が必要?」研究では
- 約10 ng/mLが目安とされる
- 一方、5 ng/mLでも問題ないという報告もある
👉 結論、一律の正解はない
👉 重要なのは、血中値 ≠ 子宮内の効果
医師としての結論
この研究から言えることはシンプルです。
✔ カプセル製剤は出生率が高い
✔ 凍結胚移植では流産率も低い
✔ 製剤の違いは臨床的に意味がある
ただし注意点もあります。この研究は後ろ向き研究、つまり
👉 完全に「どちらが絶対良い」とは断言できない
患者さんへのメッセージ
「薬はどれも同じですか?」こういった質問がよくありますが、今回のデータから言えるのは「同じではない可能性がある」。とくに
- なかなか結果が出ない方
- 流産を繰り返している方
👉 一度、黄体補充の方法を見直す価値があります
さいごに
不妊治療は「ほんの数%の差」が結果を大きく左右します。その積み重ねが👉 妊娠 → 出産につながります。もし今の治療に迷いがあれば「プロゲステロンの種類」という視点も、ぜひ持ってみてください。
📚参考文献(MLA形式)
Dhillon-Smith, R. K., et al.
“A Comparison of Progesterone via Vaginal Oil Capsules versus Pessaries for Luteal Phase Support in Assisted Reproduction Treatment: A Multicentre Cohort Study of 42,291 Cycles.”
Human Reproduction, vol. 41, no. 1, 2026, pp. 59–68.