【津高本院】不妊治療のページです
培養室の中だけじゃない、“手の技術”が命を救う場面もある
🔍「生殖医療=体外受精」だけではない世界
最近の生殖医療の進歩は本当にめざましいものがあります。顕微授精(ICSI)、胚の遺伝子検査(PGT)、凍結保存(vitrification)――これらの技術のおかげで、妊娠の可能性は格段に高まりました。
一方で、研究者たちはある“静かな変化”に気づいています。それは、「生殖医療専門医(REI)」が手術を行う機会が減っているという現実です。
🩹手術の機会が減ることで何が起こる?
昔のREI医師は、卵管の手術や子宮筋腫、子宮内膜症、卵巣のう腫などを自ら手術し、
“妊娠しやすい身体づくり”を外科的にも支えていました。しかし今では、
- 子宮内膜症や卵管水腫などの手術は他の婦人科医に紹介される
- REI医師の多くは、採卵や胚移植を中心に外来・ラボ業務に専念する傾向が強まっています。
結果として、患者さんにとっての診療の流れが分断されやすくなっている――つまり、原因の診断から治療まで一貫して同じ医師が関われない状況も増えているのです。
🧠技術の進歩と“医の心”のバランス
もちろん、体外受精や凍結胚移植が成功率を高めているのは事実です。けれども、「医療」はテクノロジーだけでは成り立ちません。
たとえば、子宮筋腫が原因の不妊の場合、“手術をするべきかどうか”という判断には、画像だけでなく、実際に手術経験を積んだ医師の「感覚」も重要です。
研究では、「手術経験を積んだ医師ほど、手術を“しない判断”が上手になる」㉒ Losing our edge how the decli…と指摘されています。つまり、“どんな治療をすべきでないか”を見極める力も、外科経験から養われるのです。
🧩生殖医療の未来へ
幸い、アメリカでは2022年から「Surgical Scholars Tract(SST)」という新しい教育プログラムが始まりました。これは、REI専門医の中で手術技術を再び磨き、“手の技”と“ラボの技”を両立できる次世代医師を育てる仕組みです。
研究者たちはこう語ります。「生殖医療の未来を切り拓くのは、科学だけではない。“手”と“心”を使って患者を支える医療を忘れてはいけない。」
🌈まとめ
私たちが体外受精の技術に感謝しながらも、「人が人を支える医療」の原点を見つめ直すことはとても大切です。
🌸最新技術と人の手のぬくもり――その両方がそろって、はじめて“生まれる力”が引き出されるのです。
📚出典
Shah DK, Cedars MI, Gracia CR.
Losing our edge: How the decline of surgery is reshaping the specialty of reproductive endocrinology and infertility.
Fertil Steril. 2025;124(4):633–634.
