【津高本院】不妊治療のページです
がん治療と“未来の命”を両立する新しい手術――子宮・卵巣の“お引っ越し”
🌱がん治療と「未来の家族」を守るために
がん治療の進歩により、若い世代でも治る直腸がんが増えています。
しかし、治療の一部である骨盤部への放射線治療は、卵巣や子宮に強いダメージを与え、将来の妊娠が難しくなることがあります。
「命を守るための治療」と「いつか子どもを持ちたいという希望」。この二つの願いを、どちらもあきらめないための新しいアプローチがスペイン・バルセロナのHospital del Mar研究チームから報告されました
🦋手術で「子宮と卵巣を避難させる」という発想
この研究では、放射線の影響を避けるために
子宮や卵巣を骨盤の外に一時的に移動させる手術を行いました。
- 卵巣転位(Ovarian transposition):卵巣を放射線が当たらないお腹の上部へ移動。
- 子宮転位(Uterine transposition):ロボット手術で子宮全体を上方に移動。
治療後、がんが落ち着いた段階で再び子宮を元の位置に戻す――まさに「子宮と卵巣を一時避難させる」画期的な方法です。
🔬研究結果:安全で、治療の遅れもなし
このプログラムでは、45歳以下の直腸がん患者5人が対象となりました。
- うち 2名がロボット手術で子宮転位、
- 1名が腹腔鏡で卵巣転位を受けました。
結果は――
- 全員が合併症なく回復
- 放射線治療は術後10〜15日以内に開始できた
- 子宮の血流・機能も維持されていた
つまり、がん治療を遅らせることなく、妊娠の可能性を守ることができたのです。
🧠「チーム医療」で成り立つ“未来志向のがん治療”
このプログラムが成功した背景には、
婦人科腫瘍医、外科医、放射線治療医、看護師が連携する多職種チームの存在があります。放射線治療前に婦人科が関わることで、「どの患者に温存が可能か」「どの方法を選ぶか」を丁寧に検討。さらに、看護師が患者ナビゲーターとしてサポートし、
不安や疑問に寄り添う体制が整えられていました。
💬研究者からのメッセージ
この手術はまだ少数例での報告ですが、
- 安全に行える
- 治療を遅らせない
- 将来の妊娠の可能性を残せる
という希望のある結果が示されました。
今後は長期的な経過を追い、実際に妊娠・出産に至るかどうかを確認することが課題とされています。
🌈まとめ
直腸がん治療であっても、「妊娠をあきらめる必要はない」時代が近づいています。
- 命を救う治療と、
- 未来の命をつなぐ希望。
どちらも守る医療を実現するために、世界中の医療チームが挑戦を続けています。
治療の選択肢に“未来を残す”という選択肢を――それが、今日のがん医療の新しいスタンダードです。
📚出典
Mancebo G, Miralpeix E, Vidal J, et al.Fertility-sparing program for Young women with Rectal Cancer: Ovarian and Uterine Transposition.
Fertil Steril. 2025; DOI:[10.1016/j.fertnstert.2025.09.034]