【津高本院】不妊治療のページです
がん治療と“未来の命”を守る、新しい手術のおはなし
「がん治療と“未来の命”を守る、新しい手術のおはなし」
がんの治療法が進歩する一方で、「治療後に子どもを持てるのか?」という不安を抱く女性も少なくありません。
特に骨盤内の放射線治療は、卵巣や子宮にダメージを与えるため、将来の妊娠が難しくなることがあります。最近、そんな女性たちに希望をもたらす新しい技術が登場しました。その名も――子宮転位術(uterine transposition)。これは、放射線が当たらないように一時的に子宮をお腹の上の方へ移動させるという、まさに“子宮の避難”ともいえる手術です。

「子宮を守るための“血の流れチェック”がカギ」
子宮を動かす手術で一番大切なのは、血流(子宮への血の通り道)を保つこと。
血の流れが悪くなると、子宮がダメージを受けてしまうおそれがあります。
そこで登場するのが、インドシアニングリーン(ICG)蛍光法という最新技術。
これは、体に無害な蛍光色素を注射し、特別なカメラで血流を“光って見える”ようにする方法です。
手術中にリアルタイムで子宮がきちんと血液を受け取っているかを確認できるため、子宮の安全を守りながら手術を進めることができるのです。この技術を使った最新の報告では、若い大腸がん患者さんの子宮を守ることに成功し、将来的に妊娠の可能性を残すことができました
「“がん治療か、妊娠か”ではなく、“どちらも”を目指す時代へ」
子宮転位術はまだ新しい手法で、世界でも報告例は25例ほどと少数です。
しかし、放射線治療後でも妊娠・出産の希望をつなげる画期的な方法として注目されています。
がんの治療中でも、「いつか子どもを授かりたい」という想いを守ることができる――
そんな時代が、すぐそこまで来ているのです。
📚出典
Klein EJ, Yazdani A, Christianson MS. Advancing fertility preservation surgery: perfusion monitoring using indocyanine green for uterine transposition before pelvic radiation therapy. Fertil Steril. 2025;124(4):666–667.
https://doi.org/10.1016/j.fertnstert.2025.07.026