【津高本院】不妊治療のページです
①PPOS法とアンタゴニスト法、どちらが良い?研究が示す最新知見
体外受精(IVF)の成功に欠かせないステップのひとつが 調節卵巣刺激(卵巣刺激 ・排卵抑制)です。卵巣を刺激して複数の卵子を育てること、採卵前に排卵してしまうことを防止することで、より妊娠の可能性を高めることができます。
従来よく使われてきたのは GnRHアンタゴニスト法 ですが、近年は PPOS(プロゲスチン併用卵巣刺激法) が注目されています。
🔹GnRHアンタゴニスト法とは?
FSH製剤の連日注射を行い、ある程度に卵胞が発育してきた時点から、排卵抑制のためにGnRHアンタゴニストの連日注射を開始します。この方法の場合は、卵巣過剰刺激症候群(OHSS)のリスクが高くなく、ホルモン値や子宮環境などに問題がなければ、新鮮移植も可能な場合があります。
🔹PPOS法とは?
PPOS法では、卵巣刺激中に飲み薬(プロゲスチン) を併用することで排卵を抑え、安定して卵子を採取できるようにします。従来法に比べて、注射の回数を減らせるというメリットがあり、特に日本のように 凍結胚移植が主流の国 では使いやすい方法と考えられています。ただし、新鮮胚移植はできず、全胚凍結が前提になります。
🔹アンタゴニスト法とPPOS法の比較
特徴 メリット 注意点
GnRHアンタゴニスト法
注射で、排卵抑制
・実績が豊富
・安定した結果
・注射回数が多い
・通院回数が増える
PPOS法
飲薬で、排卵抑制
・飲み薬で便利
・注射回数が少ない
・全胚凍結に適合
・新しい方法
・長期データは少ない
・原則、新鮮胚移植できない
🔹研究から分かっていること
- 中国の大規模ランダム化比較試験(RCT) では、PPOS法とアンタゴニスト法を比較したところ、出生率に差はほとんどなく、両者とも有効であることが示されました。
- 一方で、日本の研究チームが行った解析では、「対象となる患者さんの背景(卵巣予備能、使用するプロゲスチンの種類など)が異なるため、単純に比較できない」と指摘されています。
- さらに、研究では卵胞を取り囲む顆粒膜細胞の遺伝子解析を行い、PPOS法が卵子の質や胚発育に与える影響を分子レベルで探る試みも進められています。
🔹患者さんにとっての意味
現時点での結論は、「PPOS法もアンタゴニスト法も、どちらも有効」ということです。
ただし、患者さんの年齢や卵巣の状態によって適した方法は異なるため、主治医とよく相談して最適な刺激法を選ぶことが大切です。
PPOS法は飲み薬を使うため便利ですが、まだ比較的新しい方法であり、長期的なデータの蓄積が必要です。研究者たちは「ひとつの答えに固執せず、さまざまな角度から検証を続けることが重要」としています。
まとめ
体外受精における卵巣刺激法は進化を続けています。
PPOS法は日本の医療現場で使いやすい選択肢の一つであり、患者さんにとっても注射の負担を減らせるメリットがあります。
「どの方法がベストか?」はまだ研究段階ですが、確実にいえるのは 選択肢が増えていることは患者さんにとって前向きなニュース だということです。
≪出典≫
- Handa M, Takiuchi T, Kawaguchi W, et al. Adverse effects of progestin-primed ovarian stimulation: combination of clinical study and single cell analysis.Reprod Biomed Online. 2025;51(3):104833.
- Response letter: The efficacy of an ovarian stimulation regimen should be based on randomized trials. Reprod Biomed Online. 2025;51(3):105128. doi:10.1016/j.rbmo.2025.105128
