【津高本院】不妊治療のページです
子どもの未来を守るために ― 男の子の「妊よう性温存」という選択肢
生殖医療の現場から、少し特別なお話をシェアします。
それは「小児や思春期の男の子の妊よう性温存」についてです。
がんや血液の病気の治療には、時に「妊よう性(将来の子どもを持つ力)」に影響する薬や放射線治療が必要になることがあります。大人であれば、精子を凍結保存して将来に備えることができますが、思春期前の男の子はまだ精子を作ることができません。そんなときに注目されているのが「精巣組織の凍結保存」です 。
精巣組織の凍結保存とは?
簡単にいうと、将来精子をつくる「タネ細胞」が含まれている精巣の一部を小さく採取して、凍結して保存する方法です。
まだ臨床応用(実際に赤ちゃんが生まれるところまで)は限られていますが、ヨーロッパを中心に研究が進み、すでに3,000人以上の子どもたちがこの方法で未来の可能性を残していると報告されています 。
誰が対象になるの?
- 小児がんや血液の病気で、治療により妊よう性が失われる可能性がある場合
- まだ精子がつくれない年齢の男の子
- 精子の凍結保存ができない思春期初期の患者さん
こうした場合に、医師から選択肢のひとつとして説明されることがあります 。
大切なのは「未来の選択肢を残すこと」
もちろん、この方法が「必ず赤ちゃんにつながる」とは言えません。けれども、将来の医学の進歩によっては、その保存した組織から新しい命を育むことができる可能性があります。
親御さんにとっては、治療に立ち向かうお子さんの未来に「希望のタネ」を残してあげられる選択肢のひとつとなります。
挙児希望カップルのみなさんへ
今、病気と闘っている子どもたちにとって「将来、子どもを授かれるかどうか」という問題は、まだ遠い未来のことのように感じられるかもしれません。でも、医学は少しずつ未来の選択肢を広げています。
私たち医療者は、患者さんとご家族に寄り添いながら、その希望を支える準備をしています。
≪出典≫
- ESHRE FP for Boys Working Group. ESHRE good practice recommendations on fertility preservation involving testicular tissue cryopreservation in children receiving gonadotoxic therapies. Hum Reprod. 2025;40(8):1391–1431. https://doi.org/10.1093/humrep/deaf106
当院の木森木林(きもりきりん:ペンネーム)が「精子凍結保存」について小説を書いています。