【津高本院】不妊治療のページです
男性の年齢は、胚の数に影響するの?
提供卵子9,732周期の分析でわかったこと
「年齢の影響は女性だけ?」
「夫も歳をとったけれど大丈夫?」
こうしたご質問をよくいただきます。
今回は、女性側の条件を
そろえた特別な設計で、
男性の年齢と男性不妊の影響を
調べた研究をご紹介します。
❓ どんな研究なの?
アメリカの全国データベース
(SART CORS)を使い、
📊 9,732周期
の体外受精を分析しました。
ポイントは、
🥚 すべて「提供卵子」を使った周期
に限定したこと。
卵子提供者の平均年齢は約26歳で、
女性側の年齢の影響を
取り除くことができます。
❓ 男性の年齢で差は出たの?
出ませんでした。
生検した胚の数は
🔍 どの年齢層でも中央値5個
移植可能な胚の数も
🔍 3〜4個で差なし
でした。
(30歳未満・30〜39歳・
40〜49歳・50歳以上で比較)
❓ 50歳以上でも大丈夫なの?
この研究には、
👨 50歳以上の男性 1,735人
というまとまった人数が
含まれていました。
それでも胚の数に
明確な差はみられませんでした。
統計モデル上はごくわずかな
低下(1歳あたり0.998倍)が
ありましたが、
臨床的な意味は
小さいと考えられます。
❓ では何が影響したの?
「男性不妊の診断があるかどうか」
でした。
移植可能な胚の数は、
📈 男性不妊なし:4個
📉 男性不妊あり:3個
と、中央値で1個の差がありました。
❓ 重症度で差はあった?
ここも意外な結果でした。
🔍 軽めのタイプ(中等度乏精子症・形態不良)
🔍 重いタイプ(高度乏精子症など)
で、胚の数に
明確な差はありませんでした。
つまり「軽い男性不妊でも
影響しうる」ということです。
❓ 無精子症の場合はどうなの?
閉塞性(通り道の問題)と
非閉塞性(精子をつくる力の問題)で
比較されましたが、
生検した胚の数・移植可能な胚の数
いずれも差はありませんでした。
🌈 まとめ
- 提供卵子9,732周期という大規模データで検証
- 男性の年齢は、移植可能な胚の数に明確な影響を与えなかった
- 「男性不妊の診断がある」ことで、移植可能な胚が中央値で1個少なくなった
- 軽い男性不妊でも影響しうる(重症度による差は不明確)
- ただしデータベースの性質上、男性不妊は過小報告されている可能性が高い
📋 院長からのコメント
女性側の年齢の影響を取り除くために提供卵子周期に限定した、設計の優れた研究です。男性の年齢そのものよりも「男性不妊の診断があるかどうか」が胚の数に関わるという結果は、臨床的に重要だと考えます。
胚1個の差は小さく見えるかもしれませんが、1周期ごとのご負担や費用を考えると決して軽くありません。一方でこのデータベースでは男性不妊が20%程度としか記録されておらず(実際はもっと多いと推定されます)、本当の影響はさらに大きい可能性があります。精液検査は、ぜひご夫婦そろって受けていただきたい検査です。
📚 出典
Chemerinski, Anat, et al. "Male Factor Infertility Diagnoses, but Not Male Age, Significantly Affect the Yield of Usable Embryos in Donor Oocyte Cycles." Fertility and Sterility, vol. 126, no. 4, 2026, pp. 640-47.
