【津高本院】不妊治療のページです
キャリアを取るか、子どもを取るか」…本当に二者択一?
医師になるまでの道のりは長く、過酷です。学生時代から研修医、専門医取得、キャリア形成へと続く道の中で、多くの医学生や若手医師が「いつか子どもを持ちたい」と思いながらも、現実には「今は無理」と先送りしてしまう――。
このテーマを掘り下げたのが、ニューヨーク大学の研究者たちによる論文「All our eggs in one basket(卵をひとつのカゴに入れるな)」です。
調査によると、女性医師の不妊率は一般女性の約2倍。「キャリアか、家庭か」ではなく、「両方を叶える仕組み」が必要であることが、改めて浮き彫りになりました。
🩺「医学生の3人に1人が不妊リスク」――現場のリアル
医学部の女子学生の多くが、「子どもを持ちたいけれど、研修中は無理」と回答。
特に外科系を志望する学生ではその傾向が強く、「妊娠=キャリアへの悪影響」という思い込みが根強く残っています。さらに、調査では次のような課題が明らかになりました。
- 不妊や卵子凍結についての正確な知識が不足
- 卵子凍結やIVF(体外受精)などの費用負担が大きい(1サイクル15,000〜20,000ドル)
- 周囲の偏見やキャリア上の不利益を恐れて相談しづらい
- LGBTQ+学生や慢性疾患を持つ学生がさらに孤立しやすい
つまり、多くの若手医療者が「選べない」のではなく、「選ぶための環境がない」のです。
🌼卵子凍結は“保険”ではなく“選択肢”
卵子凍結を活用する医学生・研修医も増えています。しかし研究者たちは、「凍結=安心」ではないと指摘します。というのも、社会的な理由で凍結された卵子の多くは実際には使われていないのです。
キャリアの変化やライフスタイルの多様化により、「子どもを持つ」以外の人生を選ぶ人も増えています。大切なのは、“今は子どもを持たない”という選択も、自分で決められること。医療者であれ誰であれ、「後悔しないために、知識を持って選ぶ」ことが最も重要です。
💬医療現場ができること
研究チームは、医療教育の中に生殖・ライフプラン教育を取り入れるべきだと提案しています。それは「個人の問題」ではなく、「医療者のウェルビーイング(心身の健康)」に関わる問題だからです。医学生・研修医だけでなく、職場全体が「人生の選択を応援する文化」を作ること。そのためには――
- 妊娠・出産を「キャリアのブレーキ」ではなく、「人間らしい選択」として受け止める
- 卵子凍結などの医療的オプションを公平に利用できる制度
- 育児や家庭を支える柔軟な勤務体制
が求められます。
🌈おわりに:未来の医師も、未来の親も
「卵は一つのカゴに入れないで」――この言葉は、キャリアと家庭の“どちらか”ではなく、“どちらも大切にする”というメッセージです。
未来を見据えた準備は、何歳からでも遅くありません。医療職に限らず、どんな職業の方でも、「いつか」のために一歩踏み出すことが、未来の自分を支える力になります。
📚出典
Unger KG, Quinn GP. All our eggs in one basket: the false dichotomy of parenthood and a medical career. Fertil Steril. 2025;124(4):660–661.
