【津高本院】不妊治療のページです
着床前遺伝子検査(PGT-A)、実際の医療現場ではどうだったのか
イギリスの登録データ11万件以上から見えてきたこと
特定の方にはPGT-Aが役立つ可能性をお伝えしましたが、今回は視点を変えて、イギリス全体の実際の診療データを使った大規模な検証結果をご紹介します。
❓ どんな研究なの?
イギリスの不妊治療の登録機関(HFEA)が持つ11万件以上の治療データを使い、PGT-Aを受けた方(2243名)と受けなかった方を、できるだけ公平な条件で比較しました。
❓ なぜ「公平な条件」での比較が必要だったの?
以前の研究では、「そもそも胚ができなかった方」まで比較対象に含めてしまう統計的な誤り(免疫時間バイアス)があったことが指摘されていました。今回はその誤りを修正した上で分析されています。
❓ 結果はどうだったの?
PGT-Aを受けた方は、初回の移植でも、最終的な累積の結果でも、📉 出産率がやや低いという結果でした(初回移植:14%減、累積:26%減)。
❓ なぜこのような結果になったの?
PGT-Aを受けた方の約半数近くのケースで、移植できる胚が1つも残らなかったことが
主な理由と考えられています(PGT-Aなし:5%、PGT-Aあり:48%)。
❓ 良い面もあったの?
はい。流産のリスクは、PGT-Aを受けた方の方が📉 明確に低い結果でした。「出産率を上げる」効果は確認できませんでしたが、「流産を減らす」効果は支持される結果でした。
🌈 まとめ
- イギリスの大規模な実診療データでは、PGT-Aは出産率をやや下げる結果だった
- 主な理由は、検査によって移植できる胚が残らないケースが増えることだった
- 一方で、流産のリスクは明確に低下した
- 出産率を上げる目的でのPGT-Aは推奨されていないが、流産を避けたい方には検討の余地がある
📋 院長からのコメント
前回ご紹介した研究とは異なる結果に見えますが、対象とする患者さんの背景や目的(出産率を上げたいのか、流産を減らしたいのか)によって、PGT-Aの意味合いは変わってくるのだと思います。
この大規模な登録データの結果は、PGT-Aを「全員に勧める検査」とすべきではないという、これまでの国際的な立場を裏付けるものです。検査を検討される際は、目的を主治医としっかり共有することが大切です。
📚 出典
Roberts SA, Brison DR, Harper J, Kondowe F, Vail A. PGT-A is associated with a reduced live birth rate in routine practice: evidence from the UK ART register. Reproductive BioMedicine Online. 2026;53(3):10574
