【津高本院】不妊治療のページです
培養液のわずかなpHの違い、赤ちゃんの出生率に影響する?
世界初のランダム化比較試験でわかったこと
体外受精では、胚を育てる培養液のpH(酸性度)を細かく管理していますが、実はこれまで、「どのpHが最適か」を示すヒトでのデータはありませんでした。今回、世界で初めての比較試験が行われました。
❓ どんな研究なの?
フランスの3つの施設で、顕微授精(ICSI)を受けた424組のカップルを対象に、胚を育てる培養液のpHを
🅰️ 7.22
🅱️ 7.38
このいずれかに厳密にコントロールして比較しました。
❓ このくらいの差は大きいの?
数字としては小さく見えますが、pHは対数の尺度のため、0.2の差は水素イオン濃度で見ると約1.6倍の差に相当します。現在の培養液メーカーが推奨する範囲の両端にあたる値です。
❓ 結果はどうだったの?
出産率(採卵あたり)は
🅰️ 7.22の培養液:29.3%
🅱️ 7.38の培養液:27.0%
と 統計的に明確な差はみられませんでした。
受精率や胚の発育、着床率にも差はありませんでした。
❓ 流産のリスクはどうだったの?
🅰️ 28.6%
🅱️ 17.3%)、
7.22の培養液の方が流産率がやや高い傾向がみられましたが
こちらも統計的に明確な差とは言えませんでした。
❓ この結果から何がわかるの?
初期の胚には、📈 pHが多少変動しても細胞内の状態を保つ仕組みがしっかり備わっていることが示唆されます。
培養室での細かな管理が、実際の赤ちゃんの出産率に大きな影響を与えるとは限らないようです。
🌈 まとめ
- 培養液のpHを7.22と7.38で比較しても、出産率に明確な差はみられなかった
- 受精率・着床率・胚の発育にも差はなかった
- 流産率がやや異なる傾向はみられたが、統計的な差ではなかった
- 初期胚はpHの多少の変動に適応できる可能性が示された
📋 院長からのコメント
培養室のpH管理は、私たち生殖医療に携わる者にとって非常に細心の注意を払う部分ですが、この研究は「多少の違いが、必ずしも赤ちゃんの出産率を左右するわけではない」ことを示す、興味深いデータだと感じました。
とはいえこれは初期の胚(3日目まで)に限った結果であり、胚盤胞まで培養する場合には当てはまらない可能性もあります。培養条件の管理自体の重要性は、今後も変わらないと考えています。
📚 出典
Gatimel N, Chansel-Debordeaux L, Zokpe J, Bettiol C, Bacus J, Chauvel J, Besnier P, Cens S, Huet S, Bouko-Levy E, Depuydt C, Lepage B, Moreau J, Leandri R. Effect of embryo culture medium pH on live birth rate after IVF/ICSI: a double-blind, multicentre, randomized trial. Reproductive BioMedicine Online. 2026;53(3):105775.
