【津高本院】不妊治療のページです
「原因不明不妊」と言われたあなたへ ~それは「原因がない」ではなく、「まだ分かっていない」という
「検査は全部正常です。」
「原因不明不妊ですね。」
診察室でそう言われて、
💭「結局、何が悪いの?」
💭「治療して意味があるの?」
💭「本当は何か見落とされているのでは?」
そんな気持ちになったことはありませんか?
実は、多くの患者さんが同じような不安を抱えています。
今回ご紹介する論文は、「原因不明不妊(Unexplained Infertility)」という言葉が患者さんにどのような影響を与えるのかについて議論した興味深い報告です。

「原因不明不妊」とは何?
まず大切なことがあります。原因不明不妊とは、「原因が存在しない」という意味ではありません。
「現在の医学で調べられる範囲では明らかな原因が見つかっていない」という意味です。つまり、「原因がない」ではなく「まだ特定できていない」状態なのです。
不妊症の中で原因不明不妊は珍しくない
一般的に原因不明不妊は、不妊カップルの約10~30%程度を占めると報告されています。
✔ 卵子
✔ 精子
✔ 卵管
✔ 排卵
これらの検査で大きな異常が見つからなくても、妊娠は成立しないことがあります。
なぜ原因が分からないの?
論文では「人間の妊娠は非常に複雑で、単純に一つの原因だけで説明できないことが多い」と述べています。
✔ 良好な卵子
✔ 元気な精子
✔ 正常な受精
✔ 胚の輸送
✔ 子宮内膜への着床
妊娠成立には数多くのステップが必要です。そのため、現在の検査では評価できない小さな要因が複数重なっている可能性があります。
「原因不明」という言葉がつらい理由
この論文で特に印象的だったのは、患者さんが「原因不明不妊」をどう受け止めているかです。
「重大な病気が見つからなくて安心した」という気持ちと「原因が分からないのでどうしたらよいか分からない」という気持ちが同時に存在していました。
その結果、「今月こそ妊娠するかもしれない」という期待と「まただめかもしれない」という落胆を毎月繰り返しやすくなります。
「原因探し」にとらわれ過ぎないことも大切
私たちは誰でも「原因が分かれば安心できる」と思います。しかし論文では、十分な根拠がないまま「きっとここが原因です」と断定することは患者さんのためにならないと指摘しています。
医学的根拠に基づきながら、「現時点で分かっていること」「分かっていないこと」を正しく共有することが重要なのです。
女性だけが自分を責める必要はありません
論文では、不妊における心理的負担は女性の方が大きくなりやすいことも指摘されています。
原因不明不妊では特に、
✔ 「私に問題があるのでは?」
✔ 「もっと早く治療していれば…」
✔ 「何か私が悪かったのでは…」
このように考えてしまう方が少なくありません。しかし、原因不明不妊は誰かのせいではありません。ご夫婦の努力不足でもありません。
原因不明不妊と上手に向き合うために
論文では、不確実性を隠すのではなく、きちんと説明しながら次の治療方針を共有することが大切だと述べています。患者さんにとって重要なのは、
✔ なぜ原因不明なのか
✔ 次にどんな選択肢があるのか
✔ どの治療が期待できるのか
これらを理解することです
🌸 医療者から皆さまへ
「原因不明不妊」という言葉は、時に患者さんを不安にさせます。しかし、それは「妊娠できない理由がない」という意味ではありません。
現在の医学でも、妊娠という奇跡のすべてを解明できているわけではないのです。原因が分からなくても、適切な治療によって妊娠・出産に至るご夫婦はたくさんいらっしゃいます。
一人で悩まず、分からないことは遠慮なく担当医に相談してください。私たちは原因を探すだけでなく、皆さまと一緒に最善の道を考えていきたいと思っています。
《出典》
Gallagher, Meurig Thomas, et al. “Re: The Problem with Calling It ‘Unexplained Infertility.’”
F&S Reports, vol. 7, no. 3, 2026, pp. 253–254.