【津高本院】不妊治療のページです
子宮内膜は厚いのに妊娠しない(最新研究が教えてくれる大切なこと)
体外受精を受けていると、「内膜は何mmですか?」という言葉をよく耳にします。実際、下記のような子宮内膜の厚さが重要な指標として使われています。
✅ 7mm以上
✅ 8mm以上
✅ 10mmあると安心
でも最近、「内膜の厚さだけでは分からないことがある」という興味深い研究が発表されました。
帝王切開を経験した女性を対象にした研究
今回紹介する論文は、過去に帝王切開を経験した女性と、経腟分娩を経験した女性の
凍結胚移植(FET)の成績を比較した11,000周期以上の大規模研究です。
子宮内膜の厚さは同じだった
帝王切開の経験があっても
🌸 子宮内膜の厚さ
🌸 薄い内膜による移植中止率
これらに違いはありませんでした。
つまり、「見た目の厚さ」は十分だったのです。
それでも出産率は低かった
ところが、内膜の厚さは同じなのに、生児獲得率(赤ちゃんを出産できる率)は帝王切開既往群で低下していました。さらに、染色体が正常な胚(euploid胚)だけで比較しても同じ結果でした。つまり、「胚の問題では説明できない差」が存在していたのです。
研究者たちが伝えたいこと
この論文で最も重要なメッセージは、「内膜が厚い」=「着床しやすい」とは限らないということです。たとえるなら、家の広さは十分でも中の環境が整っているとは限らないというイメージです。
着床には「厚さ」以外も大切
研究者たちは、着床には次のような要素が関係している可能性を指摘しています。
✅ 子宮の収縮(蠕動運動)
✅ 子宮内の炎症
✅ 帝王切開瘢痕部の変化
✅ 子宮内の細菌環境(マイクロバイオーム)
✅ 免疫バランス
これらは超音波で測る「内膜の厚さ」だけでは分かりません。
帝王切開したら妊娠しにくくなるの?
誤解しないでいただきたいのは、「帝王切開をしたから妊娠できない」という話ではありません。
今回の研究で確認された差は、数%程度の比較的小さな差でした。また、多くの帝王切開経験者がその後も自然妊娠や体外受精で出産しています。なので、必要以上に心配する必要はありません。
🏥 医療者が診療で大切にしなければならないこと
以前は、「内膜が○mmだから大丈夫」という評価が中心でした。
🌱 胚の質
🌱 子宮内膜の状態
🌱 子宮形態
🌱 炎症や感染
🌱 マイクロバイオーム
これらによる総合的な視点で妊娠しやすさを考える必要があります。
まとめ
✅ 内膜の厚さは大切な指標
✅ でも厚さだけでは着床力は分からない
✅ 帝王切開既往では内膜が十分厚くても出産率がやや低い可能性がある
✅ 着床には炎症・免疫・子宮収縮・細菌環境なども関与する
✅ これからの生殖医療は「内膜の厚さ」だけでなく「内膜の質」を評価する時代へ
体外受精での子宮内膜は、「何mmあるか」だけではなく、「赤ちゃんを迎える準備ができているか」が大切です。今後の研究によって、子宮内膜の“質”をより正確に評価できる時代が来るかもしれません。
≪出典≫
Amit Jaiswal. Commentary on "Frozen embryo transfer outcomes in patients with prior cesarean delivery: a focus on endometrial lining parameters". Fertility and Sterility Reports. 2026;7(3):249-250.
