【津高本院】不妊治療のページです
採卵ってどれくらい不安?痛い? VRは効果ある?
IVF採卵×VR体験:期待と現実
113人の臨床試験から見えたこと
体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)において、**採卵(卵子を取り出す処置)**はとても大切なステップです。ただし、多くの方がこう感じています。
- 不安:平均スコア 約41.6点(STAIスコア)
- 痛み:3.7〜5.6点(10点満点)
👉「そこそこ不安で、そこそこ痛い」…というのが実情です
最近注目の「VR(バーチャルリアリティ)」って?
VRとは、ゴーグルをつけて自然の映像やリラックス空間に没入する技術。医療の現場では、
- 手術前の不安軽減
- 処置中の痛み軽減
などで効果があるとされ、期待されてきました。
今回の研究:採卵でVRは効くのか?
オランダの研究チームが、113人の採卵患者さんを対象に検証しました。
- VRあり:57人
- VRなし:56人
(両群とも鎮静・鎮痛薬は使用)
👉いわば「薬+VR vs. 薬だけ」の比較です
結論
👉 VRは、採卵の不安も痛みも“減らしませんでした”
🧠 不安
- 処置前:差なし(差 0.14、P=0.885)
- 処置後:差なし(差 0.45、P=0.589)
💥 痛み
- 全体の痛み:差なし(差 −0.12、P=0.779)
- 最大の痛み:差なし(差 0.59、P=0.287)
👉 不安・痛みとも統計的に「意味のある差」はありませんでした
じゃあVRは意味ないの?
👍患者さんの“気持ち”は違った
- VRありの人は
- 「次もVRありでやりたい」👉 有意に多い
- 「VRを人に勧めたい」👉 有意に多い
👉 数値では変わらないのに、「また使いたい」と感じている
なぜこうなった?
研究から見えてきたヒントは3つです。
① 痛みが強すぎるとVRは効きにくい
採卵は針を卵巣に刺す処置です。
👉 痛みがある程度を超えると、“気をそらす”だけでは限界がある可能性
② 短時間なら効果があるかも
👉 卵胞10個以下の人では
- 痛みが約 0.93点低下(P=0.041)
つまり、
- 短時間
- 軽い処置
ではVRが効く可能性があります
③ IVF患者さん特有の心理
実はこれが一番重要かもしれません。
👉 約50%が研究参加を拒否、その理由は…
- 「処置を見たい」
- 「医師と話したい」
- 「自分でコントロールしたい」
👉 採卵は「赤ちゃんに近づく瞬間」
👉 “ちゃんと感じたい”という気持ち
VRは逆に「現実から離れる」ため、合わない人もいるのです。
医師としてのまとめ
この研究から言えることはシンプルです。
👉 VRは万能ではない
ただし、
✔ 痛みが軽いケース
✔ 短時間の処置
✔ 「気を紛らわせたいタイプの方」
には選択肢になる可能性があります。
患者さんへのメッセージ
採卵の感じ方は本当に人それぞれです。
- しっかり意識を保ちたい人
- できるだけ楽にやり過ごしたい人
👉 どちらも正解です。大事なのは「自分に合う方法を選ぶこと」VRもその選択肢の一つとして、「合う人には合う」ツールと言えます。
📚参考文献(MLA形式)
van Haaps, A.P., et al.
“No Anxiety or Pain Reduction by Virtual Reality during Oocyte Retrieval in IVF/ICSI Treatment: Results of a Randomized Controlled Trial.”
Human Reproduction, vol. 41, no. 1, 2026, pp. 39–49.
