【津高本院】不妊治療のページです
排卵周期とホルモン補充周期、どちらが良い?最新研究でわかる“正しい選び方”
「凍結胚移植(FET)」は、いまや妊娠を目指す多くのカップルが経験する治療になりました。ただ、その際に必ず出てくるのが──
自然周期(排卵周期)で移植したほうがよい?
人工周期(ホルモン補充周期)で移植したほうがよい?
という疑問です。最新レビュー論文で、「どのFET方法が本当に安全で、どんな人にどの方法が向いているのか」をまとめた研究報告です。
🌼 1. 凍結胚移植の準備方法は3つあります
論文の 図1(p.3) には、代表的な準備法がわかりやすく示されています。
① 自然周期(NC)
排卵を自然に待って、体が作るホルモンで内膜を整える方法。
② 変法自然周期(mNC)
排卵のタイミングだけhCG注射で調整する自然に近い方法。
③ ホルモン補充周期(AC)
エストロゲンとプロゲステロンを外から補い、排卵を抑える方法。
スケジュール管理がしやすく、世界の多くのクリニックで採用されています。
🌿 2. 妊娠率は「どれを選んでもほぼ同じ」
最も大規模なランダム化比較試験(約1200名)では、下記の結果で妊娠率はほぼ同じ という結果でした。
つまり──“人工周期にすると妊娠率が下がる” という心配は不要 です。
- 自然周期:37%
- 変法自然周期:33%
- 人工周期:34%
という妊娠率はほぼ同じ という結果でした。つまり──“人工周期にすると妊娠率が下がる” という心配は不要 です。
🌺 3. ただし「妊娠中の合併症」は少し違う可能性があります
ここ数年、多くの研究で注目されているのが、人工周期で“黄体(corpus luteum)が存在しない”ことによる影響 です。
🩺 黄体が作るホルモンや物質は、妊娠初期の血管の柔らかさや胎盤形成に関わる
論文では、黄体が作る「リラキシン」や「プロレニン」などの作用が紹介されています。
🩺 観察研究では、人工周期は以下のリスクがやや高い
(複数のシステマティックレビューによる)
- 妊娠高血圧症候群(HDP)
- 子癇前症(preeclampsia)
- 低出生体重児
- 胎児過成長(LGA)
- 前置胎盤
- 産後出血
ただし、ここで大切なのは──増えるといっても「絶対的なリスクは小さい」 という点です。論文によると
❝人工周期が原因でpreeclampsiaが起きる割合は3%ほど❞
❝自然周期に切り替えても、1000人中4〜22例が減る程度❞
つまりリスクは確かにあるが「過度に怖がる必要はない」 ということです。
🌈 4. では、どの方法が良いの?
論文の結論はとてもバランスの良いものです。
✔ 「全員が自然周期にすべき」というわけではない(p.6)
- 多嚢胞性卵巣症候群PCOSなど排卵が不安定
- 更年期や無月経
- 自然周期が負担になる方
こうした方には、人工周期が最適。
✔ 自然周期のほうが望ましいケースもある
- 高血圧リスクが高い
- 前回preeclampsiaを経験
- BMIが高い
- 多胎を避けたい(子癇前症のリスクがさらに上がるため)
✔ 一番大事なのは「その人のリスクを個別に評価すること」
つまり──“どちらが正しい”のではなく、“あなたに合った方法を選ぶことが大切”
というメッセージです。
🌼 5. 患者さんへのまとめ
- 妊娠率は自然周期でも人工周期でも「ほぼ同じ」
- 合併症リスクは自然周期のほうが少ない可能性
- ただし人工周期も十分安全で、世界中でスタンダード
- あなたの体質・病歴・ホルモン状況で最適な方法は変わります
- 「自然のほうが絶対いい」「人工は危険」と心配する必要なし
治療方法の最適解は、患者さんの背景と価値観によって変わるため、主治医と相談しながら進めるのが安心です。
出典
Polyzos, Nikolaos P. “Endometrial Preparation Protocols for Frozen Embryo Transfer: Risk Assessment and Individualized Management.” Human Reproduction, vol. 40, no. 10, 2025, pp. 1815–1823.