【津高本院】不妊治療のページです
ICSIとIVFってどっちが良いの?最新大規模研究から見える“本当のところ”
体外受精に進むとき、「ICSI(顕微授精)」にするべきか、「IVF(ふつうの体外受精)」で良いのか……迷われる方はとても多いです。
今回は、824名のカップルをランダムに割り付けて比較した最新の大規模研究(INVICSI試験) から、「重症の男性不妊ではない場合、どちらが有利なのか?」を、できるだけやさしくまとめてお伝えします。
結論から言うと──
ICSIを“なんとなく”選ぶ必要はありません。むしろ、IVFのほうが良い面もある ことが示されました。
🌼 ICSIとIVF、胚の成長に差はある?
研究では、ICSI群 388例、IVF群 378例の胚が詳細に解析されました。その結果──
✔ ICSIは「使える胚(特に5日目の良好胚)」がやや少ない
論文の ページ5の表(Table 2) によると、
- 5日目の胚盤胞数:IVF > ICSI
- 5日目の良好胚数(高品質胚):IVF > ICSI
つまり、受精方法がICSIの場合、使える胚の数が少なくなる傾向 が見られました。
一方で──
✔ 胚の分割スピードや成長リズムは ほぼ同じ
「時間軸で胚の成長を追った解析(タイムラプス解析)」でも、ICSIとIVFで違いはなし(ページ6のTable 4および補足データ)。つまり、“成長能力”そのものに大きな違いはないという結果でした。
🌿 男性因子が重くない場合、なぜIVFが推奨されるの?
この研究でも、そして他の複数の大規模RCTでも同じことが示されています。
✔ 重症の男性不妊でなければ、ICSIは妊娠率を上げない
- 新生児アウトカム
- 生産率(出産率)
- 累積生産率
いずれも ICSIとIVFで差はなし。
✔ それどころか「胚が減る」リスクがある
ICSIは、受精そのものを改善するために生まれた技術ですが、必ずしも胚の質を上げるわけではありません。今回の研究ではむしろ、IVFのほうが5日目に到達できる胚が多いという結果でした。
🌺 じゃあ、ICSIはいつ必要なの?
ICSIは「必要なときに使うと、とても力を発揮する技術」です。たとえば──
- 強い乏精子症
- 精子の運動率が非常に低い
- 採卵日当日の精子数が大きく低下
- これまでIVFで受精障害があった
- 凍結精子しか使えない症例
など。
こうした場合は、ICSIが推奨されます。
しかし、男性因子が通常〜軽度の場合、ICSIを“ルーチンで使う”必要はありません。
🌈 患者さんが知っておくと安心なポイント
🌟 ICSIだから有利、というわけではない
「念のためICSIを…」と選ばれる方もいますが、正しい適応が大切 だと研究は教えてくれます。
🌟 IVFでもしっかり受精するケースが大多数
今回の研究でも、IVFの受精率は良好(58.5%)。
無理にICSIを選ばなくても、しっかり受精し、妊娠につながります。
🌟 ICSIの“操作そのもの”が胚に与える影響も議論されている
ICSIは高度な操作であり、卵子への負担をゼロにはできません。
(今回の研究で5日目胚がやや少なくなった可能性もここに関連。)
✏ 出典
Berntsen, Sine, et al. “Early Embryo Developmental Kinetics Following IVF versus ICSI in Patients without Severe Male Factor Infertility: A Secondary Analysis of a Multicentre, Randomized Controlled Trial (INVICSI).” Human Reproduction, vol. 40, no. 10, 2025, pp. 1877–1885.