【津高本院】不妊治療のページです
“もう一度授かる”ために。流産の真実を見つめる新たな医療のかたち
🌱流産は「特別なこと」ではありません
妊娠初期(12週まで)の流産は、全妊娠の約3割に起こるといわれています。多くは「染色体異常」が原因で、母体のせいではありません。けれど、「なぜ流産したのか」を知りたいという思いを抱く方も多いでしょう。
これまで、流産の処置には**子宮内容除去術(掻爬・キュレット法)**が一般的でした。しかし最近、子宮鏡(ヒステロスコピー)を使った処置が注目されています。
そしてさらに一歩進んだ技術が――**エンブリオスコピー(embryoscopy)**です。

🔬エンブリオスコピーとは?
子宮鏡を使って子宮の中を直接観察し、胎嚢を開けて胚(胎児)の状態を“目で確認する”方法です。研究チーム(Calisら)は、妊娠初期に流産した5例を対象に、エンブリオスコピーで胎児の形態を詳しく観察しました。その結果――
- 胸壁の欠損(心臓の位置異常)
- 水腫性変化(胎児のむくみ)
- 神経管閉鎖障害(脊髄・脳の形成異常)
- 顔面の発育異常
- 超音波では「胎児なし」と見えたケースで、実際には小さな胚を確認
といった、超音波では見えなかった異常が可視化されました。
🧬なぜこれが大切なの?
これまで流産の原因を調べるには、主に**染色体検査(遺伝子解析)が行われてきました。しかし、手術中に取り出した組織には母体の細胞が混じってしまう(汚染)**ことがあり、正確な結果が得られない場合があります。
エンブリオスコピーでは、胎児そのものを目で確認して採取できるため、より正確に遺伝子検査が行える可能性があるのです。
さらに、流産の原因を形態学的(見た目)にも確認できることで、今後の妊娠に向けて、「次の一歩」を医学的に明確にする手助けになります。
💡安全性と課題
研究では、5例すべてで合併症なく安全に実施できました。手術の映像も非常に高品質で、学術的に高い教育価値があると評価されています。ただし、まだ課題もあります。
- 遺伝子検査との結果の整合性(どちらがより有用か)
- 手技に必要なトレーニング
- コストや保険適用の問題
これらをクリアすれば、今後は標準治療として普及する可能性があります。
🌈まとめ
妊娠初期の流産は、つらい経験であると同時に、「次の命につなげるための医学的ステップ」でもあります。エンブリオスコピーは、“なぜ流産が起きたのか”をより深く理解し、再び妊娠を目指すカップルに寄り添う新しい医療技術です。
“悲しみを、希望の学びに変える”――それが、エンブリオスコピーの使命かもしれません。
📚出典
Ayyar A, Findley J. Incorporating embryoscopy into the treatment and evaluation of first-trimester pregnancy loss: is it ready for prime time?
Fertil Steril. 2025;124(4):664–665.