【津高本院】不妊治療のページです
妊娠に影響する? 卵巣マイクロバイオームを調べてみたら
体外受精(IVF)や不妊治療を受けていると、「腟や子宮内の菌が妊娠に影響する」と耳にすることがあるかもしれません。実際に、腟内には ラクトバチルス属(乳酸菌) が優勢であることが妊娠に良い影響を与えると知られています。
では、卵巣にも「常在菌(マイクロバイオーム)」がいて、妊娠や卵子の質に関わっているのでしょうか?
🔹最新研究の内容
スウェーデンやエストニアの研究チームが行った最新の解析では、健康な卵巣に特有のマイクロバイオーム(菌の集まり)は存在しない という結果が示されました。
研究では、卵巣の皮質や髄質、卵胞液のサンプルを徹底的に無菌環境で採取し、最先端の遺伝子解析(16S rRNA シークエンス)で調べました。
しかし結果として…
- サンプルの約6割は細菌DNAが全く検出されなかった
- 一部のサンプルから細菌由来のDNAが見つかったが、多くは「外部からの混入」だった
- 結果的に「卵巣に独自の菌のコミュニティは存在しない」と結論づけられました
🔹これが意味すること
これまで「卵巣マイクロバイオームが妊娠に関わるのでは?」という仮説がありましたが、今回の結果はその考えを否定するものでした。
つまり、卵巣の環境は基本的に無菌である と考えてよいのです。患者さんにとっては、過剰に「卵巣の菌」を気にする必要はなく、むしろ 腟や子宮内の環境を整えることの方が大切 であるといえます。
🔹患者さんへのメッセージ
科学は常に進歩していて、以前は「もしかすると菌がいるかも」と考えられていた場所が「実は無菌だった」と分かることもあります。
この研究もその一つで、治療に直接的な影響はないかもしれませんが、余計な不安を取り除く助けになるでしょう。「卵巣に菌があって妊娠に悪いのでは?」と心配する必要はありません。
私たちが気を配るべきは、生活習慣や腟内環境といった、妊娠に確実につながる要素なのです。
≪出典≫
- Sola-Leyva A, Pérez-Prieto I, Di Nisio V, et al. Assessing the ovarian microbiome: lack of a distinguishable microbial signature beyond contamination. Reprod Biomed Online. 2025;51(3):104988. doi:10.1016/j.rbmo.2025.104988