【津高本院】不妊治療のページです
卵子をすべて使う必要はない?――未来の選択を残すための新しい考え方
🥚「凍結卵子、何個解凍すればいいの?」という悩み
卵子凍結をしている方の中には、将来使うときにこんな疑問を持つ方が多いのではないでしょうか。
「全部の卵子を一度に解凍したほうがいいの?」
「少しずつ使うと結果は悪くなる?」
今回ご紹介するのは、アメリカのマウントサイナイ医科大学とRMA of New Yorkの研究チームが発表した、「何個の卵子を解凍するのが最も効率的か」を科学的に検証した研究です
🔬研究の概要:417回分の「卵子解凍」データを分析
この研究では、2012〜2024年の間に卵子凍結を行い、その後解凍して体外受精を行った417サイクルを解析しました。
患者を次の4グループに分け、どのくらい解凍したときに「3個以上の正常胚(euploid blastocyst)」が得られるかを比較しました。
- Aグループ:2〜8個
- Bグループ:9〜11個
- Cグループ:12〜16個
- Dグループ:17個以上
📊結果:38歳未満なら「12〜16個の解凍」で十分!
結果はとても興味深いものでした。
- **Dグループ(17個以上)**の半数(50%)が3個以上の正常胚を獲得。
- **Cグループ(12〜16個)**も27.7%と良好な結果。
- しかし**A(2〜8個)やB(9〜11個)**では成功率が大きく低下。
さらに年齢別にみると――
- 38歳未満の方では、
12〜16個の解凍でも17個以上と同じくらいの結果が得られました。 - 38歳以上の方では、どのグループでも3個以上の正常胚が得られる確率は3〜7%程度と低く、
「全ての卵子を使う」方針が望ましいとされました。
💡どうして「12〜16個」で十分なの?
これまで、「あるだけ全部解凍した方がいいのでは」と考えられてきましたが、この研究では、一定数(16個程度)を超えると成功率が頭打ちになることが分かりました。つまり――
- 38歳未満の方は、必要な分だけ解凍しても結果は変わらず、
- 次のチャンスのために卵子を残すことができるということです。
また、解凍数を減らすことで
- 余剰胚(使わない胚)の発生を減らせる
- 医療倫理的・法的リスクを軽減できる
- 培養士のラボ負担を減らせる
といった現実的なメリットもあります。
🧡「3個の正常胚」で約9割が出産できる
研究では、「3個以上の正常胚を得られた場合、約92%が出産に至る」という既存データも引用しています。
そのため、“3個の正常胚”は1人の赤ちゃんを得るための目安と考えられています。この「3個の目標」を達成するために、38歳未満の方なら12〜16個の卵子を解凍するのが効率的というわけです。
🌈まとめ:「すべてを使う」ではなく「未来を残す」選択を
この研究が教えてくれるのは――
「数よりもバランス」「量よりも戦略」。
若い年齢で卵子を凍結した方は、すべてを一度に使わず、次の選択肢を残す賢いプランを立てられるようになりました。
一方、38歳以上の方では、「持っている卵を最大限に活かす」ことが大切です。
いずれの場合も、**「自分の卵をどう使うか」を主体的に決めることが、真のリプロダクティブ・オートノミー(生殖の自律)**につながります。
📚出典
Clarke EA, Hernandez-Nieto C, Bayefsky M, et al.
Developing a decision support tool to optimize oocyte thawing for producing at least three euploid blastocysts.
Fertil Steril. 2025;124(4):694–700.
