【津高本院】不妊治療のページです
慢性子宮内膜炎と妊娠の関係――治療の新しい考え方
🌷はじめに
「子宮の中の炎症(慢性子宮内膜炎)」という言葉を耳にしたことはありますか?不妊治療中に「慢性子宮内膜炎があります」と言われ、不安を感じた方も多いかもしれません。
近年、子宮の軽い炎症が着床障害や流産の原因になる可能性があると注目され、多くの方が抗菌薬治療を受けています。しかし、「軽い炎症の場合でも、本当に抗菌薬が必要なのか?」という疑問が残っていました。
そんな中、中国・中山大学の研究チームが行った最新の大規模研究が、この疑問に答えています。

🧫研究の内容
この研究では、体外受精(IVF)を受ける681人の女性を対象に、子宮内膜の軽い炎症(慢性子宮内膜炎:CE)がある人を調べました。
炎症の程度は、病理検査で「CD138というマーカーを持つ細胞(形質細胞)」の数で診断。1〜4個の範囲を「軽度の慢性子宮内膜炎(mild CE)」と定義しました。
そのうち303人は14日間の抗菌薬治療(主にドキシサイクリン)を受け、378人は治療を受けませんでした。その後、いずれも**凍結胚移植(FET)**を行い、妊娠・出産率を比較しました。
📊結果:抗菌薬を使っても使わなくても差はなし!
結果は意外なものでした。
- 出生率(出産に至った割合)は
抗菌薬あり:47.5%
抗菌薬なし:51.8%
→ 差は統計的に有意ではありませんでした。 - 妊娠率、流産率、早産、帝王切開率など、すべての項目でも差はなし。
さらに、炎症細胞の数(1個〜4個)で細かく分析しても、抗菌薬の効果はどの群でも認められませんでした。
⚠️抗菌薬の使いすぎに注意
研究者たちは次のように指摘しています。「軽い炎症の段階では、抗菌薬を使っても妊娠率は上がらない」「むしろ腸や膣の常在菌を乱し、真菌感染(カンジダなど)のリスクが増える可能性がある」。つまり、「念のため抗菌薬を飲んでおこう」という考え方は、妊娠にプラスにならないばかりか、身体のバランスを崩してしまう恐れがあるということです。
🌱これからの新しい視点
今後は、抗菌薬以外のアプローチにも注目が集まっています。
- 子宮内の細菌バランス(マイクロバイオーム)を整える治療
- 免疫の働きをやわらげる薬(アスピリンなど)
- 炎症マーカー(HMGB1など)を指標にした新しい診断法
子宮内膜炎は「ただの感染症」ではなく、身体の免疫や微生物との関係が複雑に絡む病気。今後は「根本的な原因に合わせたオーダーメイド治療」が進むと考えられています
💡まとめ
不妊治療の現場では、さまざまな検査や治療が行われますが、大切なのは「科学的根拠に基づく治療を選ぶこと」。軽い慢性子宮内膜炎では、必ずしも抗菌薬は必要ではありません。焦らず、主治医と一緒に「今のあなたに本当に必要な治療」を見極めましょう。
📚出典
Xu Y, Kwan PY, Chen W, Zhang Q, Zhou C, Mol BW, Xu Y, Gu F.
The effect of antibiotic treatment on pregnancy outcomes in patients with mild chronic endometritis undergoing in vitro fertilization.
Fertil Steril. 2025;124(4):711–719.