【津高本院】不妊治療のページです
膣の中のバランスが、妊娠力を左右する?細菌性膣症と精子の意外な関係〜
「健康な膣の中には、“ラクトバチルス”という善玉菌がたくさん住んでいて、酸性の環境を保っています。」ところが、このバランスが崩れ、「ガードネレラ」や「プレボテラ」といった菌が増える状態を**細菌性膣症(Bacterial Vaginosis:BV)**といいます。
BVはかゆみやおりものの異常など軽い症状で済むことも多いのですが、実は妊娠しにくさにも関係していることが最近の研究でわかってきました。
🧬 BVが精子に与える「見えないダメージ」
2025年に米国ワシントン大学の研究チームが発表した報告では、BVの原因菌が出す「毒素(トキシン)」が、精子の受精能力そのものを弱めることが明らかになりました。
BVのときに増える菌は、「リポポリサッカライド(LPS)」や「バジノリジン(VLY)」という物質を作り出します。これらの毒素が精子に触れると、次のような変化が起こることがわかりました。
- 精子の動きが一時的に激しくなる(過剰興奮)
- その後、運動能力が低下し、卵子にたどり着けなくなる
- さらに、受精に欠かせない**「アクロソーム反応(卵子に侵入するための準備)」が起こりにくくなる**
つまり、精子が途中で疲れ切ってしまうような状態になってしまうのです。
🧫 BVはなぜ起こるの?
BVは、抗生物質の使用やホルモンバランスの変化、ストレスなどによって、膣の「常在菌バランス」が乱れることが原因で起こります。BVは性行為に関連して起こることもありますが、「性感染症」とは少し違います。特に再発しやすいため、治療後も生活習慣の見直しや、膣環境を整える工夫が大切です。
💕 妊娠を望む方へのアドバイス
- 気になるおりものや臭いがあるときは、早めに婦人科へ
- BVの治療は、抗菌薬の内服や膣剤で可能です
- 妊活中の方は、膣内の健康を保つことも「妊娠力アップ」の一歩
- パートナーと一緒に治療や生活習慣の見直しを行うと効果的です
🔍 まとめ
今回の研究で、BVによる「毒素」が精子の機能を直接妨げることがわかりました。これまで「卵子側」や「ホルモンの問題」とされてきた不妊の一部には、実は「膣内の菌バランス」という見えない要因が関わっているかもしれません。
健康な膣環境は、妊娠への近道。自分の体をいたわり、丁寧に整えていくことが、未来の命につながります。
出典:
Bhagwat S. et al. Bacterial vaginosis toxins impair sperm capacitation and fertilization. Human Reproduction (2025), 40(9): 1720–1734.
