【津高本院】不妊治療のページです
内膜を“育てる力”が戻る?着床改善に期待のHPLとは
「移植はうまくいっているのに、なぜ着床しないんだろう…」「内膜が薄いのを何とかしたい」そんな不安を感じている方に、今日は新しい研究から“少し未来の治療のヒント”をお届けします。
■ PRP(多血小板血漿)は聞くけど…HPLって何?
不妊治療の現場では近年、PRP(Platelet-Rich Plasma:自己血を使った多血小板血漿) が「内膜を厚くする」「着床を助ける」として注目されています。
ただ、
- 採血が必要
- 人によって成分がばらつく
- 効果が安定しにくい
という弱点も…。
そこで登場するのが HPL(Human Platelet Lysate)。PRPを加工し、成分を安定化した“内膜に優しい栄養カクテル”のようなものです。

■ 最新研究:HPLは内膜にどんな変化を起こすの?
論文では、18名の反復着床不成功(RIF)患者と5名の非RIF患者の内膜細胞を採取し、
HPLを48時間作用させたときの変化 を詳しく調べています。
研究のポイントは3つ。
① 子宮内膜細胞の“増える力”を復活させる
論文の Figure 1(ページ7) では、HPLを加えた細胞がいずれも1.2〜1.9倍に増殖 しています。特に
- RIF+薄い内膜の方のストローマ細胞:1.92倍と、非常に大きな反応を示しました。
「内膜が薄くて悩んでいる」方には、とても心強いデータです。
② 着床に欠かせない“細胞同士のつながり”を強くする
内膜は赤ちゃん(胚)を迎えるとき、細胞同士が協力しながら着床の準備をします。HPLはその準備を手助けする遺伝子(MMP1、MMP9など)を増やし、細胞外マトリックス(ECM)のリフォーム を促していました。
つまり、「赤ちゃんを迎え入れやすいふかふかのベッドを整える」ような働きをしてくれるのです。
③ 「胚と内膜がくっつく力」がアップ!
とても興味深いのが Figure 5(ページ11) の結果。研究では、着床初期の胚を模した“トロフォブラスト球”を内膜細胞にのせ、どのくらいくっつくかを測定しました。
結果は…
- RIF群:約45% → 83% にアップ!
- RIF+薄い内膜群:約57% → 86% にアップ!
HPLによって、胚が内膜にしっかり「定着しようとする力」が大きく改善していたのです。
■ まとめ:HPLは「着床の土台」を整える新しい選択肢に
この研究から見えてきたHPLの効果は次の通りです。
- 内膜細胞の増殖を促す
- 着床に必要な組織のリモデルを助ける
- 胚と内膜の“接着力”を強化する
特に、RIFの方・薄い内膜で悩む方 に役立つ可能性が高く、将来はPRPに代わる より安定した治療法 になるかもしれません。まだ「臨床応用」には研究が必要ですが、
内膜治療の未来が明るくなる、期待の大きい報告でした。
■出典:
Nguyen TTN, Kwok YSS, Zhang C, Russell SJ, Librach CL. Unveiling the molecular mechanisms of human platelet lysate in enhancing endometrial receptivity. Human Reproduction. 2025;40(10):1957–1971.
doi:10.1093/humrep/deaf118