【津高本院】不妊治療のページです
妊活中の「頭痛薬」、本当に大丈夫?
アセトアミノフェンと胚発生のお話
「妊活中だけど、頭痛や発熱のときは何を飲めばいいの?」これは外来でも、とてもよく聞かれる質問です。
これまで アセトアミノフェン は「妊娠中でも比較的安全に使える解熱鎮痛薬」として、世界中で広く使用されてきました。
ところが、2025年に発表された新しい研究で、「妊活中の使用については、少し立ち止まって考えたほうがよいかもしれない」という報告が出てきました。
■ どんな研究だったの?
この研究では、
- ヒトの受精卵(胚)
- マウスの胚
- ヒトの幹細胞
- 子宮内膜や卵胞液
などを用いて、アセトアミノフェンに触れたとき、胚がどうなるかをさまざまな方法で詳しく調べています。その結果、共通して見られたのは、
👉 細胞分裂が抑えられる
👉 胚の成長スピードが落ちる
という変化でした。
■ もう少し噛み砕くと…
受精卵は、「細胞分裂を繰り返しながら成長し、着床できる力を獲得する」という、とても繊細なプロセスをたどります。今回の研究では、
- DNAを作る働きが低下する
- 将来、赤ちゃんになる部分(ICM細胞)が減る
といった変化が確認されています。つまり、胚が元気に育つための“エンジン”が少し弱まる可能性が示唆された、ということです。
■ そもそも、なぜ妊娠は成立しにくいの?
実は、人間の妊娠はとても効率が良いとは言えません。
- 受精卵の 10~40%は着床しない
- 着床しても、妊娠判定前に約10%が自然に淘汰される
と言われています。その原因の約半分は染色体異常ですが、残り半分は、
- 喫煙
- 飲酒
- 生活習慣
- 薬剤などの環境要因
が関与している可能性があります。今回の研究は、「薬もその一因になり得るのでは?」という視点から行われたものです。
■ じゃあ、妊活中はどうすればいいの?
ここがとても大切なポイントです。
✔ 妊娠中
➡アセトアミノフェンは、今でも「最も安全性が高い解熱鎮痛薬」の一つです。
(これは変わっていません)
✔ 妊活中(特に排卵前~受精・着床の時期)
➡「絶対ダメ」ではありませんが、必要最小限にとどめるほうが安心 と考えられます。頭痛や発熱がつらいときに、「我慢しすぎる」必要はありませんが、
- 本当に必要か?
- 他に対処法はないか?
- 服用するなら最小限にできないか?
を一度考えてみる価値はありそうです。
■ 最後に
妊活は、「正解が一つではない」
「情報が多くて不安になりやすい」
時期でもあります。
今回の研究は“可能性”を示した段階であり、
すぐに結論が出るものではありません。
ただし、
🌱 未来の赤ちゃんのために、少しだけ意識を向ける
それだけでも、妊活は前向きなものになります。
一緒に、無理のない妊活を考えていきましょう。
≪出典≫
Andersen, Cathrine Yding, et al. “Acetaminophen Impairs Early Embryonic Development by Inhibiting Ribonucleotide Reductase Activity.” Human Reproduction, vol. 40, no. 8, 2025, pp. 1860–1872, https://doi.org/10.1093/humrep/deaf116.