【津高本院】不妊治療のページです
治療前に知っておきたい精子凍結保存:将来の妊娠を守るための最適な準備とは
将来子どもを望む可能性があるなら、治療前の準備が大切です
抗がん剤治療や放射線治療、精巣手術などは、
精子を作る力(造精機能)に大きな影響を与えることがあります。
そのため、治療前に精子を凍結保存しておくことは、
将来の妊娠を守るための非常に重要な選択肢です。
しかし実際には、
「何回採精すればいいの?」
「何本凍結しておけば安心?」
という点は、はっきり決まっていませんでした。
専門家93名が示した「現実的な目安」
2025年の研究では、精子凍結保存を日常的にカウンセリングしている専門家93名
(生殖医療医・泌尿器科医など)にアンケートを行い、実際の臨床現場での共通認識をまとめています。
いちばん重要なのは「総運動精子数(TMC)」
精子保存の判断で最も重視されたのは、**TMC(Total Motile Count:動いている精子の総数)**でした。
TMCが25百万(2,500万)以上の場合
- 採精回数:3回以上を推奨する医師が多数
- 凍結後・融解後でも👉 TMCが1,000万以上確保できる可能性が高い
この数値は、人工授精や体外受精で妊娠率が最も高いゾーンとされています。
精子数が少ない場合はどうする?
TMCが1百万(100万)未満の場合
- 採精回数は3回以上を推奨する医師が約91%
- ただし、1回の射精を
- 1本にまとめる(42.9%)
- 3本以上に分ける(44.3%)
と、意見は分かれました
👉 「数が少ないから意味がない」ではなく、少ないなりに最大限残すことが重要と考えられています。
影響した意外な要因:保険と治療内容
年齢や既婚・未婚、子どもの有無は、保存本数の推奨にほとんど影響しませんでした。
一方で大きく影響したのは👇
- 保険適用が十分ある場合
- 採精回数を増やすと答えた医師:40%
- 保険なしの場合:3%
- 治療の性質
- 造精機能への影響が小さい治療:
採精回数を増やす → 13% - 強い影響が予想される治療:
採精回数を増やす → 55% - 両側精巣摘出前では
👉 70%が回数増加を推奨
- 造精機能への影響が小さい治療:
この研究から分かる大切なこと
- 精子凍結保存は「若い・元気なうちほど価値が高い」
- 目安として👉 TMC 2,500万以上なら、3回以上の採精が理想
- 将来の家族計画は、治療前にしか守れないことがある
まとめ:精子保存は「未来への保険」
- 抗がん剤・放射線治療前の精子保存は国際的に推奨
- 採精回数・保存本数は精子の質(TMC)と治療内容で決める
- 「迷ったら多めに残す」が、専門家の共通認識
もし治療前であれば、「精子凍結について相談したい」
その一言が、将来の選択肢を大きく広げます。
≪出典≫
Morris, Jerrine R., et al.“Sperm Cryopreservation Best Practices before Gonadotoxic Treatment: Recommendations from Leaders in Fertility Preservation.”Fertility and Sterility, vol. 124, no. 5P2, 2025, pp. 1118–1120.
