【津高本院】不妊治療のページです
ARTで生まれた女の子に“生理痛”が増える?ノルウェー45万人研究
「体外受精で生まれた子の将来」はどうなる?
体外受精(ART)は、赤ちゃんを望む多くのカップルにとって大切な治療になっています。
一方で、「将来の子どもの健康は大丈夫?」「女の子の妊娠しやすさに影響する?」と気になる方もいるかもしれません。
今回、ノルウェーから45万人以上の女児を対象にした大規模研究が報告されました。テーマは、「ARTで生まれた女の子は、子宮内膜症や腺筋症になりやすいのか?」です。
そもそも子宮内膜症って?
- 子宮内膜症とは、 本来は子宮の内側にある組織が、卵巣、骨盤内、腸、子宮筋層など別の場所にできてしまう病気です。
- 主な症状は、強い生理痛、性交痛、慢性的な骨盤痛、不妊などがあります。
今回の研究はどんな内容?
- この研究では、👧 1991〜2006年に生まれた👧 ノルウェーの女児449,611人を追跡しました。
- 🌱 ART(体外受精・顕微授精)で生まれた女の子と、🌱 自然妊娠で生まれた女の子を比較しています。
ARTで生まれた女の子は子宮内膜症リスクが高かった
- ARTで生まれた女児は、子宮内膜症・腺筋症リスクが約1.5倍高いという結果でした。
- 具体的には、HR 1.49(95%信頼区間 1.14–1.94)でした。
- 生理痛、 性交痛、月経量が多いなど関連する症状も増えていた。
- 医療機関を受診するリスクも高かった。たとえば、性交痛は約1.36倍、月経過多は約1.31倍でした。
どうしてそんな結果になるの?
まだ“分かっていない部分”ですが、論文では、いくつかの可能性が考察されています。
① 遺伝の影響
- 子宮内膜症は、 「家族性」が強い病気として知られています。
- 研究では、 遺伝率は約50%とも報告されています。
- 子宮内膜症があるARTを受ける女性がの 娘さんにも遺伝的素因が受け継がれる可能性があります。
②ART特有の”ホルモン環境”
- 体外受精では、排卵誘発剤、黄体ホルモンなどを使用します。
- 論文では、妊娠初期のホルモン環境の違いが、胎児の将来の子宮環境へ影響する可能性も考察されています。
③ エピジェネティクス(遺伝子の働き方)
- 最近は、 「DNAの配列」だけでなく「遺伝子のスイッチ」も注目されています。これを、エピジェネティクス と呼びます。
- 研究では、「ARTで生まれた子どもはDNAメチル化パターンが異なる可能性」も示されています。
「ARTは危険」という意味ではありません
体外受精の子どもたちの多くは健康に育っています
- 現在、世界では、1,000万人以上がARTで生まれていると推定されています。
- 多くの研究で、大半の子どもは健康に成長していることも分かっています。
- 今回の研究も、「将来リスクをさらに理解するため」の大切なデータの一つです。
妊活中の方へ伝えたいこと
- 「ARTだから怖い」ではなく、「長期フォロー研究が進んでいる」という点です。
- 不妊治療は、日々進化している医療です。その中で、「生まれた後の健康」についても、丁寧に研究が続けられています。
今回の研究から分かること
- ARTで生まれた女児で子宮内膜症リスク増加が報告
- ARTで生まれた女児の生理痛・性交痛・月経過多も増加
- 遺伝やホルモン環境が関与する可能性
- ただし“ARTが原因”とはまだ断定できない
- 今後さらなる研究が必要
まとめ
- ARTで生まれた女児の将来を調べた大規模研究
- 子宮内膜症・関連症状リスク上昇が報告
- 遺伝やエピジェネティクスの可能性
- ただし、多くのART児は健康に成長
- 今後も長期研究が重要
- 不妊治療は、 “妊娠するまで”だけでなく、 “生まれた後の未来”まで見つめながら進歩している医療です。
- 不安だけでなく、正確な情報を知ることが大切です。
📚出典
Magnus MC, Alavi DT, Nydal S, et al.
Risk of endometriosis, adenomyosis, and related symptoms among female offspring according to conception by assisted reproductive technologies.
Fertility and Sterility. 2026;125(4):608-616.