【津高本院】不妊治療のページです
流産・不成功の原因はひとつじゃない:私たちにできる「整理」と「理解」
「うまくいかなかった」…でも、それは“あなただけの問題”ではありません
妊娠や出産をめざす中で、「流産してしまった」「着床しなかった」「なぜだか分からない」そうした悩みや不安に直面された方は少なくありません。
医療者としても、「できる限りの検査と対策をしても、原因がはっきりしない」ことはあります。そんな中、2025年に発表されたある論文が、私たちに大切な問いを投げかけています。
🧠「一つの原因」ではなく、「いくつもの要因が複雑に絡む」こと
この論文は、「不妊や流産などの“悪い結果”は、単純な理由では説明できない」と警鐘を鳴らしています。たとえば、妊娠には次のような3者の複雑な関係が関わっています:
- 女性(母体)の体調や栄養、ホルモン、免疫状態など
- 男性(精子)の質やDNA損傷、生活習慣など
- 胚(受精卵)の遺伝的な健全性や着床能など
これらが複雑に組み合わさって、妊娠の成功・不成功を左右しています。
🍷「アルコール」だけで流産は語れない
最近の研究で、「妊娠前の飲酒が流産リスクを高める」という報告が出ています。しかし、この論文では「それだけで結論づける」ことに注意を促しています。なぜなら:
- ビタミンDや鉄(フェリチン)不足
- 未治療のセリアック病(小麦アレルギー)
- 空気汚染や生活環境の違い
- 精子DNAの損傷(喫煙・汚染・栄養)
- 栄養サプリの摂取の有無
など、他にも影響しうる“見えない変数”がたくさんあるからです。
💡大切なのは、「仕組みを考えること」
著者は次のように提案しています:
「何がどう影響しているのか」というメカニズムを想定しながらデータを見ることで、結果の意味をより正しく理解できるし、患者さんにより良い提案ができる。たとえば、
- アルコールが「精子DNAを傷つける」のか?
- 栄養状態が「卵の発育に影響する」のか?
- それぞれに「相殺(mitigating)」または「相乗(additive)」効果はないか?
こうした視点を持つことで、医学は一歩深く、そして患者さんの実情に寄り添えるものになるのです。
🌈あなたに伝えたいこと:妊娠は“化学式”ではなく“人間の物語”
私たちはよく「原因を一つに決めたくなる」傾向があります。でも、実際の妊娠や流産は、さまざまな要素が折り重なった結果として起きていることがほとんどです。
だからこそ、「何が悪かったのか」と自分を責めるより、「どんな可能性があって」「どんな工夫ができるか」を、医療者と一緒に考えることが大切です。
📚出典:
- Dugdale, G. The importance of considering complexities in the aetiology of adverse outcomes in reproductive medicine. RBMO. 2025;51(2):105013. https://doi.org/10.1016/j.rbmo.2025.105013