体外受精

1.体外受精とは?

体外受精は、女性の卵巣から排卵しそうになった成熟卵子を取りだし(採卵)、体外で受精するように1つの卵子に数万の運動精子を一緒にし(媒精)、培養器内で3~6日間にわたり経過を観察し(培養)、受精し発育した受精卵(胚)を子宮腔内へ移植し、妊娠を期待する治療法です。この媒精に用いる精子が不足する場合には、1つの精子を卵子の細胞質内に注入する顕微授精を行います。また、採卵した周期に移植(新鮮移植)しなかった胚は、凍結保存して別周期に融解移植するようにします。1978年(昭和53年)に世界最初の体外受精児がイギリスで生まれ、それまでは妊娠を断念せざるを得なかった多くのカップルが、妊娠・分娩できるようになっています。日本では2013年までに384,304名が体外受精で生まれており、最近では約25人に1人が体外受精で誕生しています。2010年には最初にヒト体外受精を行ったエドワード博士がノーベル生理学医学賞を受賞されています。しかしながら体外受精は始まって40年足らずの治療法であり、今後、現在の治療法が補正、追加、展開される可能性があります。

2.体外受精の実施施設

体外受精は高度先端治療で、どこの医療機関でもおこなうことができる治療法ではありません。実施施設は、日本産科婦人科学会(http://www.jsog.or.jp/)に体外受精、顕微授精、凍結保存の実施施設登録を行い、「体外受精・胚移植に関する倫理規定」に従って実施することになっています。岡山二人クリニックは、平成8年5月7日付けで日本産婦人科学会に実施機関登録し、医師および専従職員は実施者登録しております。また、岡山県の体外受精実施登録機関になっており、岡山県はもちろん全国の特定不妊治療費助成事業の申請を行うことができます。

3.どこの医療機関でも成績は同じですか?

医療機関によって治療方法や治療成績は異なります。体外受精の治療成績の全国集計は、日本産科婦人科学会ホームページ刊行物の日本産科婦人科学会雑誌などでご確認いただけます。各医療機関の成績は、個別にホームページ等で公開されていると思われますが、短期間の成績だけでなく年間を通じての最新成績が公開されているかどうか、妊娠率は妊娠診断薬陽性確認ではなく胎嚢確認率で表現されているか、生産率(生児獲得率)が公開されているかなどを確認してください。もっとも重要な数値は、治療に対しての生産率です。当院の体外受精成績は、当院ホームページの妊娠例報告の体外受精成績(link:体外受精の成績)でご確認ください。

4.体外受精による出生児

現在までの外国および日本の統計調査によれば、体外受精などの治療によって妊娠した児の先天異常発生頻度は、通常の妊娠と変わりません。また集中的に発生した奇形などの異常も確認されていません。一般的に母体の加齢が進むほど、流産する確率は高くなり、またダウン症候群で代表されるような児の先天的染色体異常の発症頻度が高くなります。また、多胎妊娠では、早産や未熟児の原因となり、このことが新生児異常に結びつく可能性を高くしますので、現在、日本産科婦人科学会は胚移植数を35歳未満かつ2回までは1胚に、その他の場合も2胚までにするように勧告しており、当院はこの勧告に従い基本的には単一胚移植をお勧めしています。体外受精では子宮内に胚移植しますが、子宮外妊娠の可能性は残ります。精子所見が極めて不良な場合の顕微授精では、生まれた男児の精子所見が遺伝する可能性があります。また将来的に問題点が発見される可能性が全くないとは言い切れません。

5.残念ながら保険診療は認められていません

保険診療は認められておらず、このため費用は全額自己負担となります。当院の体外受精費用はホームページの詳細情報の診療費用(link:診療費用)に挙げています。採卵・媒精・培養・移植・凍結など行ったことに対する費用になりますので、最初から支払額が決まるものではありません。最初から総額が決まっているということであれば行わないことに対しても支払うことになってしまいます。

6.費用負担の軽減

夫婦の年収が730万円未満の夫婦を対象に特定不妊治療費助成事業(link:岡山県HPへ)が実施されています。また、このほかの助成制度を行っている自治体もありますので、お住まいの自治体で確認してください。また、医療費控除の対象にもなります。

7.どんなカップルに薦められますか?

女性年齢が高齢化するほど妊娠率が低下しますので、このことを配慮して治療方針を決める必要があります。もちろん、ご夫婦が体外受精治療を望まれることが前提です。夫婦確認は、当院では特定不妊治療費助成事業における夫婦確認を基本にさせていただいています。

  • 両側の卵管に手術によっても修復できない病変がある
  • 精液所見が不良で人工授精で妊娠しない、または人工授精が適応にならない
  • 抗精子抗体陽性で、他治療を行っても妊娠しない
  • 妊娠を急がなければならない相当の理由がある

8.体外受精を希望しても当院で受けられないことがありますか?

  • 特定不妊治療費助成事業における夫婦確認ができない場合
  • 提供された卵子や精子での治療
  • 代理出産を前提とした治療
  • 当院の説明に納得できないことがある場合

9.体外受精の準備を、どのように進められますか?

体外受精は、採卵を行う予定周期の一周期前の月経3日目までにお申し出いただきます。説明会(参加できなければI’Ms動画確認)などでの資料確認の後、夫婦で「体外受精の確認同意書」を提出していただきます。このほか戸籍謄本または抄本の提出、夫婦それぞれ年1回の感染症採血(HBsAg・HCV・TPHA・HIV・クラミジアIgG抗体&IgA抗体)、精子採取の確認、自己注射希望確認などの準備が必要になります。

10.『体外受精で妊娠』を目指す20ヶ条

体外受精での妊娠を目指す20か条の体外受精お勧め治療方針です。ただし、特定不妊治療費助成事業など自治体からの補助金にも年齢制限があります。どれくらいの妊娠出産の可能性があるのかも踏まえ、チャレンジするかしないか?するとすればいつチャレンジするか?いつまでチャレンジするのか?といったことを、夫婦で良く話し合っておくことが大切ですね。

  1. 体外受精の治療内容や成績を知っておく(女性加齢に伴い治療成績は低下する)

  2. 抗ミュラー管ホルモンや夫婦で感染症などの検査を少なくとも年1回は受ける

  3. 体外受精の希望は、少なくとも前周期の月経3日目までに診察医に申し出る
    (前周期の月経期に、採血検査や超音波検査などがある)

  4. 採卵予定周期の注射や内服薬による卵巣刺激は、月経3日目からを基本とする

  5. 調節卵巣刺激法では、排卵抑制のための薬剤(点鼻薬・内服薬・注射)も併用する

  6. 低刺激法では排卵抑制はなく、採卵キャンセル率は高くなる
    (クロミフェン<アロマターゼ阻害剤)

  7. 発育する卵胞数が少ないと「採卵できない」、「移植できない」可能性がある

  8. 過剰の卵胞が発育すると、卵巣過剰刺激症候群リスクが高くなる

  9. 採卵日は2日前に決まる
    (カップル都合や医療機関都合ではなく、卵胞発育に合わせて決める)

  10. 採卵日には精子が必要になる(当日採取、精液持参または事前に精子凍結保存)

  11. 体外受精(とくに顕微授精)では射精間隔は短い方がよい(採取は必要)

  12. 良好運動精子が足りれば通常媒精だが、採卵数12個以上あれば受精0%に備え半分を顕微授精(Split)もある

  13. 胚盤胞で凍結保存し、別周期の融解移植を目指す
    (良好形態分割胚でも胚盤胞に発育しないこともあるが、胚盤胞を凍結保存し別周期に融解移植の出生児が最も多い)

  14. 子宮内膜薄い、女性ホルモン高値、採卵数が多い場合などでは、新鮮胚できない(胚盤胞を全凍結)

  15. 初チャレンジ、採卵3日目に移植可能な良好形態分割胚、移植可能な子宮環境の、総て揃えば新鮮移植も選択可能

  16. 35歳未満で2回目までは単一胚移植しかできない(日本産科婦人科学会倫理規定)

  17. 良好形態の胚盤胞は、単一移植がお勧め(多胎妊娠を避ける)

  18. 女性40歳以上や良好形態胚盤胞ないとき二胚移植も容認される
    (日本産科婦人科学会倫理規定、できないことも)

  19. 特定不妊治療費助成事業など自治体からの補助金もあるが、女性年齢や夫婦所得などに制限がある

  20. とくに治療期間が長くなると、身体的・精神的・経済的な負担が大きくなる
    (カウンセリングなども利用して夫婦で相談・納得して方針を決めましょう!)