望妊治療

1.妊娠できないのは病気ですか?

「妊娠を希望するかどうか?」はカップルの問題であり、ご夫妻が挙児を希望されないなら、「妊娠できていない状態」でも病気ではありません。しかしながら、「挙児希望しながらできていない状況」は、ご夫妻にとっては深刻な悩みであり、何らかの原因が考えられる病的な状態なのです。

2.いつ受診すれば良いでしょうか?

挙児を希望してから1年以上経過しているなら受診をお勧めします。また、女性年齢が35歳以上であれば早い段階での受診を勧めます。このほか、月経不順・月経異常・不正出血・強い月経痛や下腹痛などの症状、卵管炎・腹膜炎などの既往、子宮内膜症・子宮腺筋症・子宮筋腫・クラミジア感染・残存卵子数減少(抗ミュラー管ホルモン低値)などを指摘されている場合は、早めに受診してください。

3.夫婦での受診が必要ですか?

初めての受診は必ずしもご夫妻である必要はありません。治療方針はある程度の検査を進めてみないと判断できません。女性の検査は、月経期、月経終了直後、排卵期(性交後)、排卵後7日目頃に行います。男性の検査(精液検査)は、女性の排卵期を避けて行います。これらの検査が終了した時点で、ご夫婦での来院をお勧めします。 直ぐに体外受精や人工授精をご希望の場合は、ご夫婦での来院をお勧めします。

4.幼児連れ来院はお控えください

「幼児を連れての診療」は、病気を癒す医療機関として一般的には幼児の騒がしさや危険性からお控えいただいていると思いますが、さらに当院では、「子供がほしいのにできていないカップルの心痛」を考えてのお願いです。ただし「幼児連れで困っている方の悩み」も、ご理解いただけると思います。多数派が少数意見を尊重し、強いものが弱いものの立場を理解しようとする。垣根や障壁を作ることなく、お互いに自然体で尊重することが大切ではないでしょうか?  当院では、初診での利用はできず、また色々な利用条件がありますが、診療時間の一部をカバーする託児室を利用できます。

5.受診前に問診票をお送りください。

当院では、初めての受診の診療をスムースに進め、待ち時間を短縮させるために、予め男女別の問診票をホームページからお送りいただくことを基本にさせていただいています。この問診票は、クラウドを用い記載内容を暗号化して送受信するシステムであり、当院以外では見ることはできません。当院ホームページの「初めて受診の方へ」から男女別の問診票にお進みください。

6.受診に必要なものは?

保険証・基礎体温表・紹介状や検査成績(既に他医を受診し検査・治療を進めている場合)をご持参ください。また、あれば血液型証明書・母子健康手帳・お薬手帳(現在服用中の薬剤)なども、ご持参ください。

7.診察にはどんな服装が良いですか?

普段着で構いません。初めての受診の時は、内診だけでなく、外診(胸部などの診察)もしますので、更衣しやすいものが良いでしょう。内診時には下着を取っていただきますが、スカート等は着たままで構いません。ズボンやタイト・スカートは避けたほうが良いと思われます。

8.どうして私たちには子供ができないのでしょうか?

妊娠できない原因はさまざまです。原因は一つだけとは限らず、また、ご夫妻に双方に問題が見つかることも少なくありません。妊娠できない原因を、お互いに押し付けるものではありません。原因らしきものが見つかれば、そのことに対応した治療を行なうことができます。けれども検査しても異常が見つからないのに妊娠できていないカップルも多数おられます。

9.男性の不妊原因?

男性の不妊原因で多いのは、精液中の精子の数が少ない場合と、精子の数はあっても運動性が不良な場合です。このほか勃起不全や性交障害や射精障害といった問題がある場合もあります。基本的には、精巣の血流改善(喫煙は禁忌)、精巣温度上昇の防止、バランスのとれた食事ですが、薬剤やサプリメントを用いた治療や精索静脈瘤では精巣の血流改善を目標とする手術を行うことがあります。こうした精液所見の改善を目標とした治療を行うと伴に、女性年齢や女性の不妊原因を考慮して早期に並行して人工授精や体外受精を行うことも考慮する必要があります。このほか精液中に全く精子が認められない無精子症の場合には、精巣精子回収(採取)術を行って体外受精(顕微授精)で妊娠を目指します。

10.女性の不妊原因?

女性の妊娠しにくい原因の一つは、排卵障害や黄体機能不全などの卵巣機能不全です。卵巣機能不全は、卵巣自体の障害だけではなく、脳下垂体や視床下部の障害(無理なダイエットやストレスなど)やインスリン抵抗性など様々な原因によって起こることがあります。このほか卵管の障害(閉塞、水腫、狭窄、癒着など)、子宮筋腫や子宮奇形、卵巣のう腫、子宮内膜症(子宮腔内にある子宮内膜が異所性にある病気)、子宮頚管粘液分泌不全、抗精子抗体(精子に対するアレルギー)、性交障害などが不妊原因として挙げられます。

11.加齢で妊娠率が下降し流産率が上昇します

妊娠は何歳までという明らかな限界があるわけではありませんが、特に女性加齢が進むほど、妊娠率は低下し、流産率が増加します。またダウン症候群などの児染色体異常の発生頻度は、30歳では400人に1人程度ですが、40歳で100人に1人程度の確率になります。これらのことは、治療開始や治療のステップアップを決める上でも、十分知っておく必要があります。

12.受診費用はどれくらい?

「不妊症」の受診は保険診療で行えます。このほか症状や所見がある場合には、保険診療で検査が行えることがあります。これら検査で異常がみつかった場合には、さらに追加検査や治療を行うことになります。保険診療では、検査、処置、薬剤など総ての医療行為に料金が設定されています(2年1回4月に改定されます)が、月一回の検査診断料加算などがあり、同じ検査や治療をしても支払い料金は異なる大変複雑なものになっていますが、総額の7割が公的負担になり、3割が自己負担額になります。なお現在のところ、人工授精や体外受精などの治療は、保険診療が認められておりませんので、自費診療(全額自己負担)になります。

13.検査で異常が見つかれば適切な対応ができます!

検査で原因が見つかれば、それに対応した治療で妊娠を期待できます。また、不妊原因が見つからない場合や不妊原因が取り除けない場合でも、妊娠の可能性を高める治療法があります。人工授精は、精液所見不良や子宮頚管粘液所見不良で、精子の進行が思わしくないと考えられる場合に行います。また体外受精は、人工授精でも精子進行が不十分と考えられる場合のほか、卵管障害や抗精子抗体陽性など女性原因にも対応する治療になります。

14.妊娠は、どうすれば分かりますか?

着床すると受精卵が発育して将来胎盤となる絨毛から性腺刺激ホルモンhCGが分泌され始めます。このホルモンにより黄体での黄体ホルモン(プロゲステロン)分泌が持続し、基礎体温高温が持続して月経が遅延するようになります。このホルモンを高温相14日目頃(妊娠4週)に検査して着床を診断します。この一週間後(妊娠5週)になると超音波検査で胎嚢(胎児が入っている羊水が溜まった袋)が見えるようになり、これをもって妊娠と診断します。これからさらに一週間後(妊娠6週)には胎嚢内に胎児の心拍動が確認できるようになります。妊娠されても流産や子宮外妊娠 (異所性妊娠)や胞状奇胎などの可能性もありますので、月経が遅れる場合は、できるだけ早期に受診してください。

15.女の子、男の子は、どうして決まりますか?

卵子の性染色体はXですが、精子の性染色体はXまたはYのどちらかをもっています。Xをもつ精子が受精すればXXとなり女児が、Yをもつ精子が受精すればXYとなり男児が誕生します。Xをもつ精子とYをもつ精子は精巣で同数造られますが、出生児の男女比は、男:女=(1.05~1.06):1と考えられます。

16.基礎体温を付けましょう

口腔内で体温を測る婦人体温計(1分以上の実測式がお勧め)を枕元に置いておき、動いたりせずに覚醒直後に舌下で計測します。5時間以上就眠したのちであれば、時間は違っても構いません。当院では、来院後の紹介となりますが、携帯電話やスマホで体温や出血などの情報を入力すれば、自宅パソコンやスマホで基礎体温表が確認できるクラウドシステムを用意しています。この基礎体温表を診察室でも確認できますので、受診時に持参する必要はありません。基礎体温表は、月経周期の確認や治療予定の設定に有用ですので、記録した基礎体温表があれば、来院時にお持ちください。

17.聞きたいことはメモする

診療時間は限られますので、効率的に診療を進める必要があります。聞きたいことを予めメモして渡してください。資料を準備するのに時間を要すかもしれませんが、必ずお答えできます。

18.禁煙が必要です!

喫煙は、血液を粘調にし、血管を収縮させ、血栓症(血管内で血液が凝固する病気)のリスクを高めます。 卵胞ホルモン・黄体ホルモンなどの女性ホルモンや排卵誘発剤の服用も血栓症のリスク因子になります。もちろん妊娠中の喫煙は胎児発育を障害します。このようなことから望妊治療をおこなう方は、普段からの禁煙が必要です。喫煙は血流を悪くしますので、精液所見に異常がある男性も禁煙が必要です。狭い空間での間接的喫煙にも注意しましょう。

19.お酒/食事/スポーツ/ストレス/生活習慣

特別に注意しなければならないことはありません。健康であれば良いので、偏ったことは避け、ストレスを貯めないようにしましょう。酔っ払うほどの深酒や毎日の多量飲酒は健康によくありません。でも時々、夫婦でお酒でも飲んでストレス発散も良いと思います。「これを食べれば妊娠できる」ようなものはありませんが、偏らない食事と適度な運動が健康な心と身体を創ります。激しいスポーツは、基礎体温の高温後期は少し控えた方がよいかもしれません。

20.いつまで不妊治療を続けますか?

妊娠出産だけが人生の目的ゴールではありません。ご夫婦で人生を楽しんでください。旅行や趣味にも、時間やお金は必要です。夫婦で相談して、望妊治療スケジュールを決めてください。妊娠できたとしても、出産、育児、さらには親の介護など大変です。どんな治療まで受けるのか?いつまで望妊治療を続けるか?ご夫婦で目標を確認しながら決める必要があります。

21.挙児希望カップルの悩み

「子供はまだ?」という言葉に相手を傷つける意味はありません。でも妊娠したくてたまらないカップルには、答える言葉がないですね。挨拶代わりに浴びせられると、ストレスになり、攻撃されている感じを持ってしまうこともあるでしょう。このような精神的ストレスから、不安、焦燥、嫉妬を感じ、「可愛い子供は見たくない」気持になってしまうことがあっても不思議ではありません。望妊治療は、愛情=情熱=気力=根気といったメンタルなものだけでなく、体力・お金・時間を必要とします。精神的ストレス、身体的ストレス、経済的ストレス、時間的ストレスに晒されていると云えますね。

22.望妊治療宣言

「自分たちの子供を希望して努力する」ことは、他人に知られて恥ずかしいことではありません。でも、現在の社会的環境では「他人に知られたくない」と感じられることは理解できます。また、望妊カップルの心痛は一般的には全く理解されていません。望妊治療は、それまでに妊娠できていない状況を踏まえ、積極的に妊娠するよう努力してみたいと考えられているご夫妻に、より自然な、より早期な妊娠成立を目指して、検査法や治療法の情報を提供し、安心・安全・確実な医療的支援を行うことです。子育て計画を立て、積極的に妊娠するよう努力する一定期間を持つことをカップルが「望妊治療宣言」し、みんなで支援できる社会的環境を創りたいものです。