人工授精

人工授精とは?

人工授精とは、精子を膣の奥の子宮口から子宮腔内に注入する治療法を言います。人工授精という言葉から人工的に受精現象を起こす治療法と考えられがちですが、そうではありません。子宮腔内精子注入法という呼び方をすることもあります。精子は子宮から卵管の膨大部と言われる腹腔側に近いところまで進行し、卵管に取り込まれた卵子と、全く自然に受精します。

1. どんなときに勧められますか?

精液量が少ない、精子が少ない、精子の運動性がよくない、といった精液所見が不良な場合に勧められます。また、性交障害がある場合や排卵期に元気な精子の上昇が子宮頚管粘液に認められない場合も勧められます。原因が明らかでないのになかなか妊娠されていないカップルも挑戦してみる価値があります。

2. どんな準備が必要ですか?

両側の卵管に異常があったり、精子にアレルギーがある抗精子抗体強陽性では、人工授精を行っても妊娠できません。このためスクリーニング検査を行って、他に不妊原因がないかどうか確認しておく必要があります。このほか岡山二人クリニックでは、夫婦での確認同意書の提出、夫妻ともの感染症採血検査(保険適応外、年1回)の準備を予めしておく必要があります。

3. いつ実施しますか?

卵子が受精できる状態は、長く考えて排卵から一日です。一方、精子は数時間あれば卵管膨大部まで到達でき、受精可能な状態を一日以上維持できると考えられています。このため人工授精は、排卵日、あるいは排卵前日に行うのがベストです。この排卵時期の予測は尿中LH検査を行ってLH40miu/mL以上が確認できた当日勧められます。

4. 人工授精の実際

a. 人工授精の予約
排卵のタイミングが分かったら、人工授精の予約をおとりください。指定時間帯がありますが当日でも予約をとれるようにしています。指定時間帯以外や予約なしでは実施できませんのでご注意ください。当院では、ヒトの目によるダブルチェックだけでなく、診察券のバーコードを用いての夫婦間の照合を行っておりますので、診察券をご持参ください。
b. 精液の院内採取または持参
滅菌した清潔な容器に精液を採取していただき、指定時間内に提出してください。採精室をご使用になるときは、その予約も必要になります。人工授精の精液提出時間を決めさせていただいていますが、早すぎても、遅すぎても時間を要すことになりますので、必ず指定時間内にご提出ください。
c. 精子の洗浄・濃縮
精液は通常1.6ml以上ありますが、子宮腔内に注入できる液体量は0.2ml程度です。このため、精液中の精子を体外受精でも用いている培養液で洗浄濃縮します。この処理には30分程度を要します。
d. 子宮腔内に洗浄・濃縮した精子液注入
洗浄・濃縮した0.2ml程度の精子液を細い柔らかいチューブで、子宮腔内へ注入します。挿入が困難な場合には、子宮膣部を挟んで牽引したり、金属製の細管を使うことがあります。この操作自体はすぐ終わりますが、精液を持参された順番に精子洗浄濃縮や精子液注入を行いますので、日によって所要時間は異なりますが最短でも精液の持参から帰るまで2時間程度は掛かります。

5. 副作用や合併症は心配ありませんか?

子宮や卵管に炎症がある場合や精液に多くの細菌が含まれている場合には、感染症を引き起こす可能性があります。また、施行後には、少しの下腹痛と膣出血がありますが、通常の生活が可能です。

6. 自然妊娠と同じです

人工授精で子宮腔内に注入した精子は、子宮から卵管膨大部まで進行し、排卵して卵管に取り込まれた卵子と全く自然に受精します。女性が排卵誘発剤を使用していなければ、多胎妊娠の可能性は自然妊娠と同じく1%程度ですが、排卵誘発剤を使用して多くの卵胞が成熟していれば、人工授精とは関係なく、多胎妊娠の可能性は高まります。児の奇形などの異常については自然妊娠と発生頻度は同じです。

7. どのくらい妊娠を期待できますか?

当院における成績は、平均2012年1月より2014年12月までの期間に、人工授精を1515カップル(4394周期)におこなって367カップル(401周期)で妊娠が確認されました。この成績は実施した周期に対し9.1%の妊娠率(胎嚢が確認できた率)で、実施された方に対しての妊娠された方の割合は24.2%で、平均実施回数は3.1回でした。この成績は、女性加齢により不良になっています。詳細は、(link:人工授精成績)でご確認ください。

8. 回数が増えると妊娠しにくいですか?

治療を行い、その結果を確認することは検査的な意味合いがあります。当日の精液所見や、左右どちらの卵巣からの排卵かといった異なる条件はありますが、同じことの繰り返しでは妊娠できる可能性は次第に低くなります。また加齢によって妊娠率は明らかに低下します。精液所見の改善を目指す、精液所見に問題がなければ腹腔鏡を行ってみる、体外受精にステップアップするなど、積極的な対応を考慮する必要があります。

9. どのくらい費用が掛かりますか?

保険診療は認められておらず、このため費用は全額自己負担となります。当院の人工授精費用はホームページの詳細情報の診療費用(link:診療費用)に挙げています。直接の費用以外に、事前に「望妊治療センター利用登録(夫婦で一回のみ)」および「感染症採血検査(夫婦それぞれ年一回)」が必要です。

10. 費用負担の軽減

自治体によっては補助金制度がある場合がありますので、お住まいの自治体で確認してください。また、医療費控除の対象になります。

11. 『人工授精で妊娠』を目指す10ヶ条

岡山二人クリニックの人工授精のお勧め治療方針です。
ただ女性年齢、AMH値、見つかった原因などによっては、すぐに体外受精へのステップアップも考えられますね。
  1. 人工授精の治療内容や成績を知っておく(女性加齢で成績は低下する)

  2. 抗ミュラー管ホルモンや夫婦の感染症などの検査を少なくとも年1回は受けておく

  3. 子宮卵管造影検査をしておく(両側卵管に異常あれば人工授精しても無駄になる)

  4. 精液検査や抗精子抗体検査をしておく(高度な異常では人工授精しても無駄になる)

  5. 卵巣機能に問題がなければ排卵誘発剤などは必ずしも必要でない

  6. 排卵時期を推定して実施する(排卵後より排卵前に)

  7. 人工授精実施日の当日予約も可能だが、精液提出には指定時間帯がある

  8. 精液は院内採取または採取2時間以内に持参(精子の運動性は時間経過で低下する)

  9. 精液所見の改善を目標にしながら実施する(禁煙、採血検査、男性外来受診など)

  10. 3回実施で妊娠できてなければステップアップも考える(腹腔鏡? 体外受精?)