一般治療(保険診療)

1.排卵時期を知りたいのですが?

  • a.過去の基礎体温表を参考にする
排卵時期を基礎体温表で判断するには、体温が下がった時を見るのではなく、 0.3℃以上の上昇が続くかどうかで判断します。 1日高温だからといって排卵したとは云えませんが、2~3日以上高温が続けば排卵は終了していると考えられます。高温相になる前にいつもより低い体温が見られることもありますが、あまりあてにはなりません。また排卵が終了していても体温が上がっていないこともあります。このように基礎体温は絶対的なものではなく参考にするものですが、有用性があり自己管理できますので続けましょう。
  • b.子宮頚管粘液の自覚および検査所見
発育する卵胞から分泌される卵胞ホルモンが増加することにより、排卵期には子宮頚管粘液が精子の上昇を助けるように変化します。子宮頚管粘液検査では、量が増える、透明になる、糸を引くようになる、乾燥させるとシダ葉結晶がみられるなどの変化を確認します。 この頚管粘液の変化を自覚できれば、排卵が近づいていると予測できます。クロミッド(クロミフェンクエン酸塩)という排卵誘発剤の使用では検査所見が不良となる場合があります。
  • c.超音波検査による卵胞や子宮内膜
卵子が成熟するのに伴って、卵胞(卵子が入っている卵胞液の袋)がしだいに大きくなります。排卵期の卵胞径は、自然周期や排卵誘発剤セキソビッド(シクロフェニル)、レトロゾール(アロマターゼ阻害剤)服用周期では18~22mm、排卵誘発剤クロミッド(クロミフェンクエン酸塩)服用周期では24mmくらいになります。 また、子宮内膜は月経後しだいに厚くなり、排卵期には8mm以上になって受精卵の着床準備を進めます。 このような変化を膣からの超音波検査で調べます。気持悪さはあるかもしれませんが痛みはありません。
  • d.尿中の黄体形成ホルモン(LH)
卵胞が成熟した時、排卵のキッカケをとるために下垂体から黄体形成ホルモンLHが増加します。この変化を尿検査キットで確認しますが、 LHは時間単位で変化し、増加開始から約1日半後、増加ピークからは半日後に排卵がおこると考えられます。

2.女性の検査

望妊治療の基本は、原因があるなら見つけ出して、これをなくすことです。この妊娠しにくい原因をみつけるために検査をします。卵管の異常に対しては腹腔鏡や体外受精、排卵障害や卵巣機能不全に対しては薬物療法、性交後検査不良に対しては男性治療や人工授精や体外受精などが適応になります。

  • a.卵管通気検査(ルビンテスト)(月経終了直後に実施)
子宮腔に細いチューブを挿入し、子宮口を小さな風船で塞ぎ、チューブの先端より炭酸ガスを送ります。卵管が閉鎖してなければ子宮から腹腔内へガスが送られ、子宮腔内の圧力はあまり上昇せずほぼ一定となります。両側卵管閉鎖や卵管の機能状態のチェックができますが、左右の個別診断や閉鎖部位の診断はできません。検査当日は少量の出血があります。シャワーはかまいませんが、入浴と性交は避けてください。
  • b.子宮卵管造影検査(月経終了直後に実施)
子宮腔に細いチューブを挿入し、子宮口を小さな風船で塞ぎ、チューブの先端より造影剤を子宮腔内へ注入します。子宮腔形状や卵管異常がないか確認する検査です。希に造影剤(ヨード剤)に対するアレルギー反応がみられる人があります。検査当日は少量の出血があります。シャワーはかまいませんが、入浴と性交は避けてください。
  • c.子宮頚管粘液検査(排卵期に実施)
卵巣の卵胞から分泌される卵胞ホルモンの作用により、排卵期には頚管粘液が精子上昇しやすいように子宮頚管粘液が変化します。量、透明度、糸を引くようになっているか、乾燥させるとシダの葉のような結晶がみられるかなどをチェックします。クロミッド(クロミフェンクエン酸塩)という排卵誘発剤の使用により検査所見が不良となる場合があります。
  • d.性交後検査:フーナーテスト(排卵期に実施)
排卵期に頚管粘液中に運動精子が認められるかどうか検査します。2日程度の禁欲期間後、検査当日または前日に性交をして来院してください。排卵期以外では前進精子が認められなくても異常ではありませんが、排卵期の検査で結果が不良の場合、頚管粘液所見不良、精液所見不良、性交障害などが考えられます。また、これらに異常がないにも関わらず運動精子が認められない場合には、抗精子抗体などの免疫異常も考えられます。
  • e.夫の精液検査(排卵期以外に実施)
精液を採取して原則として2時間以内に検査をおこないます。妊娠優先で排卵期は避け、2~3日程度の禁欲期間でお渡しする容器に直接、清潔におとりください。精液量、精子濃度、運動率、前進率、正常形態率などを調べます。男性の場合、女性と違って周期的変動はありませんが、精液所見はバラツキが大きく1回の検査ごとに一喜一憂するものではありません。検査成績が不良の時は再検査してください。

3.男性の検査や治療は、どう進められますか?

再検査でも異常が認められる場合は、精密検査や治療が勧められます。ただし、必ず改善するとは言えず、また治療に時間を要していきますので、女性年齢なども考慮して人工授精や体外受精などの治療も並行して考える必要があります。

  • a.ホルモン採血検査
男性ホルモン(テストステロン) 黄体形成ホルモン(LH、脳下垂体から分泌され精巣での男性ホルモン産生を刺激)、卵胞刺激ホルモン(FSH、脳下垂体から分泌され精子を造るのを刺激)
  • b.感染症採血検査(保険適応外、人工授精や体外受精では年一回実施)
クラミジア(IgG抗体&IgA抗体)、AIDS(HIV)、B型肝炎(HBs抗原)、C型肝炎(HCV)、梅毒(TPHA)の検査
  • c.精索静脈瘤が疑われる場合には、睾丸触診や超音波カラードプラー法で確認します
  • d.薬物療法
勃起不全や逆行性射精に対して薬剤を処方することがあります。また、精巣の血流改善を目標に薬剤やサプリメントを用いた治療を行いますが、残念ながらどれも必ず効果があるといえるものではありません。 精子は70数日でつくられていますので、2~3ヶ月継続して服用していただき改善効果を判定します。 喫煙は血流を悪くしますので禁忌です。少量のアルコールは問題ないと思いますが、多量はいけません(もちろん健康のため休肝日は必要です)。精索静脈瘤で手術適応がある場合は川崎医科大学付属病院を紹介します
事前に染色体検査やY染色体にある精子形成遺伝子AZF欠失の有無を調べて手術適応を確認します。精巣の一部(場合によっては顕微鏡下)を採取して精子回収(採取)を目指します。

4.卵巣機能不全や排卵障害があるときの採血検査

  • a.プロラクチン
プロラクチンは、脳下垂体から分泌されるホルモンで分娩後に乳汁を分泌させます。ストレスなどで高値となり卵巣機能不全をきたすことがあります。
  • b.卵胞刺激ホルモン(FSH)
下垂体から分泌されるホルモンで、卵胞を刺激して成熟させます。月経時の基礎レベルが高ければ、卵巣は強い刺激にさらされている状態で排卵誘発剤を使用しても効果が上がらない可能性があります。
  • c.黄体形成ホルモン(LH)
下垂体から分泌されるホルモンで成熟卵胞があれば、排卵期に一時的に増加し、増加開始から36~40時間後、ピークから12~16時間後に排卵がおこるキッカケをつくります。また黄体を刺激して卵胞ホルモンおよび黄体ホルモンの分泌を促進維持し基礎体温を高温に持ち保ちます。月経時のホルモン基礎レベルが高いときは多嚢胞性卵巣症候群の判定に役立ちます。
  • d.卵胞ホルモン(エストラジオール)
発育する卵胞より分泌されるホルモンで、排卵期に増加します。このホルモンにより、受精卵のベッドとなる子宮内腔表面の子宮内膜が増殖します。また子宮頚管粘液を精子が上昇しやすいように変化させる作用もあります。卵胞成熟度の判定には有用ですが、排卵時期を知るためには尿中LH検査のほうが優ります。
  • e.黄体ホルモン(プロゲステロン)
排卵後の卵胞には黄体が形成され、黄体からは卵胞ホルモンだけでなく黄体ホルモンが分泌され子宮内膜は着床環境を整えます。このホルモンにより、基礎体温は上昇して高温期になりますが、基礎体温高温5~8日目に採血して確認します。

5.卵管間質部(卵管の子宮壁内部分)閉鎖では卵管鏡

卵管間質部(卵管の子宮壁内部分)での卵管閉鎖がある時に行う治療が卵管鏡です。膣から子宮内に卵管鏡(内視鏡)を挿入し、子宮腔、子宮角から、さらに卵管内へカテーテルを進め、卵管閉鎖部の再疎通を目指します。閉鎖部分の状況によっては疎通できない場合があります。また再疎通したとしても再閉鎖したり、妊娠できるとは限りませんが、両側閉鎖では他の対処としては体外受精しかありません。高額医療補助制度の対象になります。
(link:卵管鏡説明

6.子宮筋腫

子宮は平滑筋といわれる筋肉でできていますが、この平滑筋が本来の子宮の形態でなく球形(コブ状)に発育してくる良性腫瘍が子宮筋腫です。症状としては、「月経時の痛み増強」、「月経出血量の増加」、「月経時以外の出血」、「月経時以外の出血」などが考えられますが、無症状のことも多く、40歳以上の女性では4~5人に一人程度にはあると考えられます。閉経すれば症状はなくなりますし縮小します。挙児希望のある方の場合は、小さくても子宮内腔へ突出するタイプや卵巣卵管近くあるタイプでは不妊や流産の原因になり、また体外受精での採卵が困難な位置にある場合があります。これらの場合は、腹腔鏡や開腹手術の適応になる場合があります。

7.子宮腺筋症

子宮腺筋症は、本来は子宮内腔の表面だけにある子宮内膜が子宮筋層内にある病態であり、子宮の肥大、変形から、「月経時の痛み増強」、「月経出血量の増加」、「月経時以外の出血」などの子宮筋腫と同じ症状を引き起こしやすくなります。この子宮腺筋症と子宮筋腫は超音波検査で壁自体の変形か腫瘤状かで判定しますが、場合によっては核磁気画像診断法MRIで鑑別診断を行います。子宮腺筋症がある場合には子宮内膜症もある可能性が高まります。子宮筋腫の場合は手術により筋腫を核出することも考えられますが、子宮腺筋症は子宮壁自体になりますのであまり手術はお勧めできません。少しの子宮の肥大や変形があっても妊娠・分娩をされている方は多くいらっしゃいますので、早期に妊娠・分娩を終えることが一番です。

8.子宮内膜症

子宮内膜症は、子宮内腔の表面にあり受精卵が着床して発育する子宮内膜が、本来ない場所(異所性)にある病態です。子宮の外側表面、骨盤内の腹膜、卵巣の表面などにある場合が多いのですが、卵巣内にあると月経血が溜まった子宮内膜症のう胞(チョコレートのう胞)がある場合があります。この場合は超音波検査で確認できることから比較的早期に子宮内膜症を診断しやすいのですが、子宮、腹膜、卵巣の表面などにある子宮内膜症については、腹腔鏡や開腹手術を行ってみないと診断できません。自覚症状としては『月経時の痛み増強』や『内診や性交時の痛み』などがあげられますが、無症状のこともよくあります。CA125という悪性腫瘍特異抗原検査が高値であれば疑いが強くなりますが月経期も高値を示しやすいので採血時期を考慮する必要があります。月経のたびに次第に拡大、増強し、卵管の卵子取り込みなどが障害され、不妊の原因になると考えられています。

9.クラミジア感染

クラミジアは性行為で感染します。 口腔内感染もありえますので、オーラル・セックスでも感染する場合があります。男性では尿道炎、女性では子宮頚管炎をおこすことありますが、男性も女性も感染しても80%ぐらいの方は自覚症状がないと考えられます。自覚症状としては、男性は排尿時の不快感や痛みや分泌物がみられる場合があります。 女性では帯下の増加がある場合があります。女性はクラミジア感染が進行すると、子宮から卵管、さらに腹腔内へ拡がり、下腹痛や発熱の原因となったり、卵管の閉鎖や癒着などを引き起こすことが知られています。 クラミジアに感染しているかどうかは、望妊治療においては血液検査でクラミジアに対する免疫を確認するクラミジアIgA抗体とIgG抗体を調べます。IgA抗体・IgG抗体ともに陽性や、いずれか一方が陽性の場合は、過去に感染があったか、あるいは現在も感染疑いがあると判定します。治療は、必ずパートナーも一緒に行います。

10.腹腔鏡

子宮内膜症やクラミジア感染などで卵管に癒着などが疑われる場合に、その診断だけでなく、治療目的に腹腔鏡を行うことが考えられます。それまでの検査では異常がみつかっていなくても初めて異常が見つかることもあります。気管内挿管しての全身麻酔を必要とする入院治療で、臍部下縁に約1cmの切開を加え、そこから内視鏡を挿入します。これ以外にも操作用鉗子挿入のための約0.5cm小切開をします。卵管の通過性を確認するため青色の検査液を子宮口より注入します。卵管の癒着の確認だけでなく、子宮・卵巣の状態、子宮内膜症を確認し、異常が認められた場合には治療的対応を行います。この手術は保険適応となりますが自己負担も10万円以上掛かります。当院医師の執刀を希望される場合は、岡山中央病院に入院し、提携病院の管理下となりますが、当院医師が出向いて執刀します。

11.開腹手術

腹腔鏡での手術が困難な場合は、開腹手術が適応になります。全身麻酔下に下腹部に約15㎝の腹壁切開を行います。入院期間は腹腔鏡よりも長くなります。当院医師の執刀を希望される場合は、岡山中央病院に入院し、提携病院の管理下となりますが、当院医師が出向いて執刀します。

12.流産を繰り返す場合(不育症・習慣流産)

1回の流産の原因は、たまたまの卵子の染色体異常による場合が多いと考えられ、女性年齢により35歳くらいで15%、40歳くらいで30%、43歳くらいには50%の頻度になると考えられています。ただし、2回続けて流産は5%以下、3回続けての流産は1%以下と考えられますので、2回以上続けて流産された場合は、妊娠前に抗リン脂質抗体などの検査を受けることが勧められます。

13.『より自然でより早い妊娠』を目指す10ヶ条

岡山二人クリニックのお勧め治療方針です。
ただ女性年齢、AMH値、見つかった原因などによっては、ショートカットしてのステップアップも考えられますね。

  1. 検査する(治療方針が、早く、的確に立てられる)

  2. 信頼できる情報を獲得し夫婦で知識を共有する(知らないままで決めない)

  3. 排卵のタイミングを知る(基礎体温・超音波・尿中LHなど)

  4. 排卵日だけでなく関係をもつほうがよい(あまりの連続射精にも注意)

  5. 明らかな原因がみつかったとき放置しない(治療方針を見直す)

  6. 明らかな原因がみつからないとき腹腔鏡もする?(女性年齢や他因子を考慮する必要)

  7. 明らかな異常でなくても改善を試みる(状況を変える)

  8. 同じ治療は3周期までを目途にする(治療が検査的意味合いを含む)

  9. 人工授精や体外受精でも、女性加齢で妊娠率は低下し、流産率は上昇する

  10. 女性年齢35歳以上ではステップアップを急ぎ、38歳以上では直ぐの体外受精も考慮する